食革命は突然に



「……大地くん、少しいい?」


「ん?どうしました、り……梨沙さん」


「それもう、アウトじゃん。」


「すみません!」


 優里さんと李梨沙の二人が戻って来て、お昼時ということもあり水族館内部にあるレストランへと向かった。そして注文を終えると、俺は李梨沙に呼ばれた。


「あとさー。今私たちは友達のはずよ?梨沙ね、梨沙。」


 耳元で悪戯に笑いながらコソコソ言うこの推しに殺されそうです僕。キュンキュン越してギュンギュンですわ。


「わ、わかったよ。それでどうしたの?」


「えーと……あはは、白瀬さんにばれちゃった♡」


「…………可愛い」


「かわっ!?!?」


 ……いや、早くない?まだ出会って30分も経ってないよ?


 でもいいんだ。アイドルの時以来にみた、テヘッ♡の仕草が可愛すぎたから、つい返しも可愛いになったわ!


 でも俺の可愛いを聞いてかしらんが、目の前の推しの顔が心なしか赤面している?言われ慣れているはずだろうになんでだろう。あ、いつも通り睨みに変わった。嬉しいような、悲しいような……


「と、とにかく!白瀬さんには、ばれたって伝えたかっただけだから!もう戻るわよ!」


「あ、あの、待って」


「? 何?」


「えと、昨日は本当にすみませんでした。

 勝手に手を握ってしまって。本当に申し訳ない……」


「え?別にいいわよ?さ、早く戻りましょ。あんまり長いと、またあの女……じゃなかった白瀬さんからなんか言われちゃう」


「え? あ、はい!」




 ……あれ、なんか思った10倍すんなりと終わったぞ?


 もしかして李梨沙は怒ってたわけではないのか?いや、あれは怒ってたでしょ。じゃあどうしてこんなすんなり……ま、いっか!何はともあれ、別に嫌われてはないんだろ?ならそれでヨシ!オタクいっきまーす!待って〜李梨沙〜!



 *


「ん〜〜〜!美味しいです〜!!!」


「こら、エリー。あまり騒がないの」


「す、すみませんデス。でも本当に美味しいデス……!あ、大地も食べマス?」


「ありがとう。

 でも俺はいいから、ゆっくり食べな?」


「遠慮すんなデス!」


「ごぶっ!?」


「はぁ、もう……」


「あはは、でも美味しいよ。有難うエリー」


「でしょーう!感謝するデス!」


 そう言ってエリーは得意げに胸を張った。


 断ったはずがかえって無理やり口にねじ込まれる結果となってしまったが、確かにこのカレーめちゃくちゃ美味しいな。夏野菜の甘みとカレーの辛味がうまくあっててイイね d(^_^o)



 でもそんなことより俺が今気になっているのは、やはり推しの事だ。


 横に座ってエリーと同じカレーを食べている李梨沙が、ギリギリ聞こえないくらいの声量で何かブツブツいっている。


 次は一体何があったというんだ……?





 ***



 ……まずい、まずいわ。

 色々なことを考えすぎてたら、神イベントをハーフの子に先こされちゃった……


 あ、李梨沙もあげればいいじゃんって思ったでしょ。わかってるけど、そう簡単な事じゃないのよ……


 ここで悔いるべきなのは、私が食べたいものを優先して彼女と同じ商品を頼んだってことね。いくら大地くんでも同じものはいらないでしょう……(きっといる)


 ……ん?

 あいつ、なんで笑った……?



「あら、それならこれも食べてみて?きっと美味しいから」


「え、ちょ……」


「遠慮しないの、ほら、あーん」


「あ、あーん」


「おいし?」


「うん……」



 …………また、やりやがったわね、白瀬ぇぇえ!!!!!!!!!


 こいつ、一度私の方を見て考えていることを察したのか、少しニヤついて大地くんにアーンをやりやがったわよ!


 あの女、やっぱりイケすかないわ……だけど正直そんなの、今はどうでもいい。今回押さえておくべき点は2点ね……


 1つ目は、人畜無害そうなハーフの子も案外侮れないということ。


 この子、いやエリーちゃんも何も考えてなさそうで白瀬に負けず劣らず、結構グイグイと大地くんに迫ってるわよね。


 そしてあの外見。白瀬とはまた別ベクトルの可愛さと美しさがうまく両立している。……しかも胸がでかい。もう一度いう、胸がでかい。


 ぱっと見だけど、あれは少なくともGはある。白瀬もエリーちゃんほどではないにしても少なくともE、いやFはありそう。


 ……なんでよ!なんで、天は二物をそんな易々と与えるのよ!!!私だってC……いや、Dはあるのに存在感薄れちゃうじゃない!


 ……嘘じゃないもん。Dあるもん。

 ……たぶん。



 そして2つ目、大地くんがカレーライスを美味しいと言ったこと。


 このカレーライスは私が食べてもとても美味しいものだった。そう、私が食べても美味しかったのだ。


 おかしい。おかしくないが彼に関していえばおかしい。私の知る大地くんはゲテモノの類が好きな男の子だったはずよね。


 なのになんで、こんな普通に美味しいものを美味しいと言ったの?彼の舌にある味蕾みらいはとっくに死んでいるんじゃないの!?


 ……まぁそれは冗談だけど、もしこの反応が本物で、彼の今までの奇食ハンタースタイルが偽物だとしたら、私勘違いして彼にとんでもない粗相をしてることない?


 え、もしかしてお前はもう死んでいるって、やつ……?……泣きそう。




 図らずも真実にたどり着いてしまった李梨沙。彼女に隠していた秘密がバレているとは露知らず、大地は美味しそうにスパゲッティをズルズル啜るのだった。



 スパゲッティうっまいゾ!!! (^ω^)



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