第3話
仕事中の私は、黒のベストに細身のスカートで、およそ王子の婚約者とは思えない恰好をしています。
ですがそれはアーサー王子をフォローするためだと、周りの方も認識してくださっているのでとても楽です。
「あらあら、ドブネズミのような恰好で。それで王子の婚約者だなんて。オホホホホ!」
そう、ヘンリー王子の婚約者であるキャサリンである。
相手にするだけ無駄であるが、周りには同じような服装の同僚がいるのである。
「働く女性を蔑むような発言はおやめください。」
「あら、私って正直なのよね。」
舞踏会でもないのにこんなドレスを着ているのは、暇を持て余した奥さま方が見栄を張ってお茶会に行く時くらいです。
まあ、私が想定していた方向に突っ走ってくださっているので良いのですが、それにしても……。
彼女の家は子爵で、父親は何の役職にも就いていません。
ヘンリー王子との婚約が、そこまで価値のあるものだと信じているのはご立派だと思います。
「レア様、私たちはレア様を応援しています。」
「そうですわ。キャサリン様と違って、王子を献身的に支えておられるレア様こそ次の……。」
「シッ!滅多なことを口になさらない方がよくってよ。」
「でも、レア様が持ち込んでくださった魔道具のおかげで、産業政策局は快適ですわ。」
「いつでも、冷たい飲み物が飲めるなんて幸せです。」
昼食とそのあとで毎日開かれるお茶会です。
「そうそう、今日は新しいスイーツをお持ちしましたのよ。」
「「「キャー!」」」
城務めの女性というのは、貴族家の次女・三女や一般の女性でも優れた人が採用されています。
彼女たちを味方に取り込んでおくのはメリットしかないのです。
こうして、翌月アーサー王子の大臣就任と私の補佐官昇進が発表されると、多くの女性たちからお祝いをいただきました。
もちろん、いただいた以上のお返しは忘れてはいけません。
この就任に、ヘンリー王子とキャサリン嬢が反発したのはいうまでもありません。
しかも、陛下に直接文句を言ったのですから、周囲からの反発は当然起こります。
ヘンリー王子は、何の実績もあげていないのですから。
アーサー王子の大臣就任後も、私は色々な産業を起こしていきます。
麦やサトウキビの増産と、加工に必要な魔道具の開発。牧畜の拡大と牧羊犬の導入。
それらの安価販売を実現管理する商業ギルドの構築。
原材料を消費する食産業の拡大。
当然ですが、それらはすべて産業政策大臣の功績となります。
そしてこれらのアイデアのいくつかは、元産業政策大臣であったお父様からもいただいています。
「産業の拡大に伴う、雇用の促進と税収の急激な増加。更に予算増加による公共事業の拡大。国民の満足度上昇がとまりません。」
「うむ。近年に類をみない躍進といえるな。」
「国政に対する評価もうなぎ上りの状態です。」
「ただ、医療と厚生に関しては、予算を増やしたにもかかわらず評価が芳しくありません。」
「自治総務大臣、具体的な方策はどうしたのだ。」
「はっ、……現在検討中でして……。」
「毎回検討中と申して居るが、いつになったら答えが出てくるんだ。」
「……。」
「他部署の意見でもいい。何か策はないのか!」
「発言してよろしいでしょうか。」
「なんだ、産業政策大臣。」
「現在、トイレから発生する汚物は、そのまま排水溝へながされています。」
「それは知っておる。だから頻繁に排水溝の清掃を行っているではないか。」
「貴族街はそうですが、下町では清爽の頻度も少なく、不衛生になっているところが少なくありません。」
「自治総務大臣、それは誠か?」
「は、はあ……いえ……。」
「下町は入り組んでおりますし、目の行き届かないところがあっても仕方ないと思います。」
「いや、そうは言っても……。」
「産業部門としては、根本的な解決を考えており、汚物を無臭化・無害化する魔道具を開発中でございます。」
「本当か!」
「これがうまくいって、水が浄化できれば魚の泳ぐ側溝にすることも可能かと存じます。」
【あとがき】
町の改造が着々と進んでいきます。
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