第2話

 婚約破棄騒動から数か月後、私は正式にアーサー王子の婚約者として陛下に承認していただきました。

「すまんなレア、ヘンリーがあそこまで愚かだったとは……。」

「いえ。もう過ぎたことでございます。」

「アーサーと共に、この国を盛り上げてくれるか?」

「当然でございます。」

「お前たち二人には期待しているからな。」

「ありがたきお言葉。感謝いたします。」


 アーサー王子とヘンリー王子は二人とも大臣補佐という役職に就いています。

 アーサー王子は産業政策局でヘンリー王子は自治総務局。役職でいえばヘンリー王子が格上になります。

 とある政策会議の席上で、私たちは予てより温めていた企画を提案します。

 もちろん産業政策大臣には事前に話を通してあります。

「では、産業政策局より、新規プロジェクトの説明をします。提案はアーサーと補助にレアがつきます。レア、入りなさい。」

「失礼いたします。」

 私は入室し、装置をセットして部屋のカーテンを閉めていきました。

 私が用意したのは、光投影型プレゼン装置。

「なんだね、それは。」

「レアが考案して、魔道具師に作らせたプレゼン用装置です。」

「ガラスに書いたものが投影されるのか、会議には効果的だな。」


 白い壁面には、『魔導推進機の活用による運輸および漁業の活性化』というタイトルが映し出されています。

「魔導推進機とはなんだね?」

「申し訳ございません。質問は後で一括お受けさせてください。」

 アーサー王子は、魔導推進機の概略に始まり、水上交通への展開による輸送時間の短縮と漁業への活用を説明していく。

「以上でございます。」

「では質問を受けます。」

「アーサーよ。これにより産業が活性化するのは理解した。だが、この魔導推進機は実現可能なのかね?」

「はい。私費を投入して既に開発は終わっています。」

 アーサー王子の発言に、会議室がざわついた。

「よろしければ、明日にでも実物をお見せしたいと思います。」

 会議室は更にどよめきに包まれた。


「経理局としては、大量生産にかかる費用が気になるところだが。」

「船外機タイプの据え付け込みで金貨1枚になるよう交渉済みです。一か月あれば元は回収できると試算しています。」

 この提案は全大臣が賛成して可決されました。


「やったね。レアのおかげだよ。」

「とんでもございません。アーサー王子が私を信頼してくださったおかげですわ。」

 アーサー王子の私室で、私は甘やかせていただきます。

 この部屋には、これまでに私が開発してきた冷却庫や冷暖送風機などが備え付けてあります。

 当然、陛下にも献上して、現在量産化に入っているところです。


「失礼いたします。陛下がお二人をお呼びでございます。」

「へえ、珍しいな二人一緒なんて。」

「そうですわね。」

 ともあれ、私たちは陛下の私室に赴いた。


「「失礼いたします。」」

「おお来たか。まあ座れ。」

 陛下に促されて私たちはソファーに腰を下ろします。

「今日のプレゼンは良かったぞ。」

「ありがとうございます。」

 私は会釈にとどめます。

「レアも、よくアーサーをフォローしてくれているな。感謝しておるぞ。」

「恐縮にございます。」


「アーサー、来月より産業政策大臣を任ずる。」

「「えっ!」」

「少し早いが、これまでの実績を考えると当然であろう。」

「ありがとうございます。」

「レアは、補佐官に昇進じゃ。」

「えっ!」

「これも、実績からすれば当然じゃな。」

 現産業政策大臣である私の父は、統括大臣という新たなポストに就くようです。


 こうして、私の野望はまた一歩、実現に近づきました。


【あとがき】

 何とか、短編のお話になりそうです。

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