第2話

 船が着いたのはアマンド王国の港町シーラです。この国のことはよく分からないので、冒険者ギルドを訪ねて情報収集にあたります。


「すみません。ファン王国の冒険者カードはそのまま使えるんですか?」

「はい、大丈夫ですよ。手数料はかかりますけど、アマンド王国のカードに変更することも可能です。」

「そうですか。それと、ファン王国の貨幣はこの国で使えますか?」

「この町でなら各ギルドで両替できますけど、ほかの町ではできませんよ。」


 カウンターで両替できるとのことなので金貨5枚の両替をお願いし、冒険者カードの再発行と地図を売ってもらいました。

 地図は国全体のものと、この町のスポット地図です。迷宮の場所や獲物の情報などが掲載されていました。


「依頼はお受けになりますか?」

「いえ、先に拠点を確保してからにします。」


 そう告げて冒険者ギルドを後にしました。そのまま商業ギルドを訪ねて、そこでも金貨5枚を両替してもらいます。お金は王子の婚約者に決定した時に、支度金として支給された金貨30枚を持ってきているので当面困ることはないでしょう。

 金貨1枚あれば、質素に暮せば1年生活できる金額です。

 そうして、私は定期馬車を乗り継いで王都と港町シーラから一番離れたセルノという町にやってきました。ここなら、ファン王国との接点はなさそうです。

 最初に商業ギルドを訪れ住まいを確保します。


「すみません。家を探しているんですが。」

「販売ですか、賃貸ですか?」

「どちらでも構いませんが、3部屋とリビング程度で、できれば冒険者ギルドの近くがいいのですが。」

「ああ、それでしたら、丁度冒険者パーティーが拠点として使っていた家が空いてますよ。ギルドの一軒隣でリビング付きの4部屋です。土地は狭いですが築5年でまだまだあたらしい物件ですね。」

「金額は?」

「賃貸なら月銀貨1枚。買取なら金貨6枚。ベッド枠やテーブルなどの家具も揃っていますので、すぐにでも入居可能ですよ。」

「そこ、買います!」

「まあまあ。近いですので、実際にご確認いただいてからがいいですね。」


 私はカウンター係りのお姉さんに連れられて家に案内してもらいました。

 レンガ造りの家は、確かに庭が狭く馬車2台をやっと停められる程度。2階建てで一階にはリビングと厨房と浴室があり小部屋が一つありました。二階には3部屋があり、各部屋にベッドの枠が備え付けられていました。

「魔道コンロも魔石を取り換えれば使えると思います。」

「気に入りました。今日から住んでもいいですか。」

「大丈夫ですよ。では、ギルドで手続きを済ませてしまいましょう。」


 こうして私は家を購入し、寝具を買い込んで満ち足りた気分で夜を過ごしたのです。

 食事は、ギルドに酒場があって、簡単な食事なら食べることができたし、少し歩けば何軒かの食堂もあります。生活環境は、少しずつ整えていきましょう。

 翌日、魔道具屋で魔石を6個購入し、一つは魔導コンロへ取付して、残りの4個を敷地の4隅に埋め、最後の一つを屋根の一番高いところに固定し、ピラミッド状の結界を発動させます。

 これで、よほど高位の魔術師以外は侵入できないでしょう。

 次に、武器屋へ行ってナイフと革の胸当てを購入し、冒険者ギルドで地図と依頼書を見比べながら適当な依頼をチェックします。


「えっと、Bランク以下の依頼は、……っと。えっ、西のトラウ山の山頂にいるクリスタルバードの羽採取で、羽1本につき褒章は金貨1枚……こんなのが残ってるなんて。」

 私は依頼書をボードから剥がしてカウンターに持っていきます。

「これ、お願いします。」

「えっ、ほ、本気ですか?」

「ええ。」

「パーティーではなく、ソロなんですよね。」

「はい。」

「トラウ山まで馬車で3日。山頂までは険しいので、山登りに長けている人でも最低4日かかるといわれています。クリスタルバードの羽は、五日で輝きを失ってしまうので、それまでに持ち帰らなければいけません。」

「はい。」

「Bランクの依頼ではありますが、超高難度の依頼なんですよ。」

「はい。」

「本気なんですか?」

「はい。」


 こうして私は初めての依頼を受注したのです。


【あとがき】

 いよいよ冒険者としての活動スタートです。賢者の無双をお楽しみに。


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