短編集 令嬢の憂鬱

モモん

お前との婚約を破棄する 1

第1話、令嬢は国外追放された

「お前との婚約は破棄する!」


王子は私を指さしながらのたまわりました。


やったぁ!と心の中で叫びながら、表面上は哀れな少女の顔で問いかけます。


「なぜでございましょう。

何かいたらないことがありましたら、おっしゃってくださいまし」


「なぜだと!

はん、お前はいつだって俺を見下してきた」


あら、表面上は取り繕っておりましたのに、気づかれていたとは……


「それに、陰から手を回して妹のルイーザに数々の嫌がらせをしてきたであろう」


それは違うわ、だってルイーザなんて眼中にありませんもの。


「そ、そのようなことは……」


「黙れ黙れ!

ルイーザからの申し立てで、すべて露見しておるわ」


ここでルイーザを見たりしてはいけない。

調子にのらせるだけだから。


「少し頭の良いのをいいことに、不埒な悪行三昧!」


桃太郎侍ですか……

でも、もう一息!お願い!


「よって、お前を国外追放とする!」


やったー!これで自由よ!

お父様お母さまには申し訳ないけれど、こんなのを婚約者に選んだんだもの、あとはルイーザに頼ってくださいまし。


「それで、いつまでに国を出ればよろしいのでしょうか」


「三日以内だ」


「かしこまりました。準備もございますので、これで失礼いたします」


私はそそくさと舞踏会場を後にした。

目に涙をためながら……


「王子、このような人前でそのような仕打ちは……」


「煩い、もう決めたことだ」


「せめて国外追放はお取り消しを」


「煩い、ならばお前も国外追放にしてやる」


「これほど申し上げても聞き入れていただけないとは、承知いたしました。

わたくしも3日いないでよろしゅうございますね」


「そうだ」




三日後、国境には6人の姿があった。

同世代の天才・秀才とうたわれた6人だった。


「さてと、予定通り6人とも国外追放となったな」


「まあ、単純な王子でよかったよ」


「さ、例の場所に向かいましょう。

開発の許可はとってあるんでしょ」


「隣国の許可証だよ。

名目も、新しい街づくりでバッチリさ」



6人は、愚鈍な王子を見限ったのだ。

あらかじめ、新しい町の場所に目星をつけて、ゆくゆくは独立して国にするつもりでいる。

一人は勇者、一人は賢者、そして魔法使いと軍師(策略家)。

経理士とメイドマスター。


彼らの計画は、まず隣国でパーティーを組み、魔王を討伐。

その褒賞と宝物を元手に街を作るというものだ。


計画は万端。

今日は記念すべき第一歩であった。

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