第10話 負けられない戦い

もう何度目になるだろうか。

彼は屋上へと階段を全力で駆け上がりながら考えていた。

彼女を助けるには、ヤツを倒さねばならない。

腕力では分が悪い事は解った。


一撃必殺…

不意討ち…

そんな不穏な言葉を思い浮かべながら、屋上への扉に辿り着く。


ソッと静かに扉を開け、そしてヤツの後ろから駆け寄る。

彼女と目が合う。

心が通じ合った気がした…のは、彼の勘違いである事は間違いない。


彼女に対し、左手で避けるようにゼスチャーを送る。

正しく理解した彼女は、彼の動線を避けるように横に動いた。

(喰らえ!不意討ちアタァァァック!)

男子生徒の後ろから体当たりを喰らわした。


堪らず体勢を崩されて吹っ飛んだ男子生徒は、そのままフェンスに激突。

脆くなったフェンス諸共、落下して行った。

「よっしゃぁぁ!勝ったぜ!!」

彼は勝鬨を上げ、彼女に向き直る。

「大丈夫だった?」

彼女は後ずさりながら呟いた。

「人殺し…」


「あっ…」



■恋の前に、故意だよね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る