第25話 熊(魔獣)VS片山さん(狂犬)
今日、暴れた山ミミズに拳で殴り掛かった
あの少女、彼女は本物だ、野生の勘で強者と
感じた熊はどうしてもあの少女と戦いたくな
り現れたのだ。
一方、片山恵那は父親から幼少の頃から最近
まで空手を習っていた。
父親は昔は手が付けられないような不良だっ
たが、空手と出会い更生した過去があった。
神の悪戯か、運命の出会いか、彼女の父親に
空手を教えたのは熊の師匠であったあの老人
だった。
父親からキレたら手が付けられない凶暴さと
それをコントロールする空手を、引っ込み思
案で人見知りな母親からその性格を、双方か
ら受け継いだ片山恵那は、引っ込み思案だが
一度スイッチが入ると狂犬へと切り替わる、
エキセントリックな女子高生になった。
弟子VS孫弟子、魔獣の熊VS女子高生の異種族
バトルが始まろうとしている。
「ケンジ君…ここは…私が…」
「でも熊だ!危ないよ!」
「大丈夫…」
片山恵那はケープを脱ぎ捨てると熊に近付い
ていった。
彼女の両腕から抑えきれない興奮で炎が上が
っている。
「よおクマ公、私とヤりたいんだろ?分かる
ぜ、思う存分楽しもうぜ!オラァ!!!」
片山恵那が殴り掛かった、熊がガードすると
反転して回し蹴りを放ってきた。
片山の魔導力が炸裂し火柱が上がる。
突然始まった凄まじい殴り合いと蹴り合いの
応酬に3人は呆然とした。
「いや…なんて言うか…人間対魔獣と言うよ
り…魔獣対魔獣…」
「あの子、ヤバ過ぎでしょ」
片山恵那が父親と空手をしなくなった理由は
中学3年生で突然炎術士の適性に目覚めたか
らだ。魔導力はふとした弾みで出てしまう、
拳で殴れば殴った面が焦げるようになった。
つまり相手を火傷、最悪火をつけてしまう為、空手教室でも、父親とも、組手が出来な
くなったのだ。
しかし彼女は受験勉強の合間を縫いなんとか
拳から発する自分の魔導力をコントロールする事に成功し、逆に魔導力と空手を連動させ
た新たな格闘術を編み出そうとしていた。
熊は待ち望んだ強者との全力の殴り合いを、
片山は自ら編み出した格闘術を全力を繰り出
せる事を楽しんでいた。
双方共に魔導力を全身に漲らせ肉体強化して
なければとっくに死んでいてもおかしくない
殴り合いだった。
「クマ公、テメェ強えな、マジ楽しくてしょ
うがねぇ…けどいつまでもテメェと遊んでい
る訳にはいかねーんだ、そろそろ寝ろや!」
片山が正拳突きを繰り出すと熊は受けずに腕
を巻き片山を背中に担ぎあげた。
「テメェ!組み技もやんのか!」
そのまま地面に片山を叩きつけた。
"死んだ!"3人はそう思った。
したし熊は片山がしっかり受け身を取れるよ
うに腕を引き上げていた。
「クマ公…トドメ刺ささねえのかよ…」
熊は彼女がもっと強くなる、もっと強敵にな
ると感じた。そして彼女の中に自分の師匠だ
った老人を見た。
片山恵那と熊はしばらく見つめ合った後、片
山が口を開いた。
「…一緒に来るかい?」
片山の言葉に熊は頷くと、彼女を起こした。
こうして大山の魔獣熊は仲間になった。
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