第8話 現代と過去の魔力


 ここから毎日のように午前は座学で、午後が実技の授業が始まった。


 座学の授業では、どうやって魔法の威力や精度などを上げる方法の授業。実技の授業では、座学の授業で習ったことを実用化できるように反復練習が始まっていた。


 噂では、二学期から二階級魔法を教わり、三学期で最終試験を受けて合格したら二年次に上がることができ、二年次に卒業となる。卒業後は宮廷魔導士の弟子になるか、冒険者になるのが大まかなルートと聞いた。


 俺とミシェル、エルは現状の授業内容をマスターしているため、個人練習をしていいことになった。そのため、俺とミシェルは精霊魔法の練習を始めた。


 人気のいないところに向かって、俺はティアを、ミシェルはシルフを呼び寄せた。するとティアが話し始めた。


「リアムは二階級魔法が使えるのだから、全属性の魔法でできるよう練習しよっか!」

「うん」


 俺たちが話し終えたのを見計らって、シルフとミシェルが話し始めた。


「俺たちはリアムくんのように二階級魔法を使えるようになろう。でも焦らずにゆっくりと。もし焦ると体を壊してしまうから」

「わかったわ」


 こうして練習が始まった。まず、全属性の威力を均一に使えるようになる練習。これが思いのほか難しかった。それはミシェルも同様だったようで、お互いが苦戦を強いられていた。


 (俺が苦戦しちゃいけないんだけどな)


 そう、シルフは風属性の適性のため、ミシェルが苦戦するのはわかる。でもティアは全属性の適性を持っているのだから、均一に使えないのは、俺の実力不足ってことになる。


 お互い苦戦しながら、一週間程立ったところでエルに話しかけられる。


「リアムくんにミシェルさんはどんな練習をしているの?」

「今は二階級魔法を安定して使えるように、全属性均一に使えるように練習しているよ」

「ふ~ん。でもリアムくんもミシェルさんも魔力ゼロって出ていたよね? なんで魔法が使えるの?」

「「......」」


 お互い、どう言えばいいかわからず、無言になってしまった。そこで一つ疑問におもって質問をする。


「なあ、本当に魔力って才能がある人じゃなくちゃ持っていないのか?」

「え? そうじゃないの?」

「でも、座学の授業では、戦士も魔力は持っているって言ってたじゃん? そして冒険者になる人たちは、この学園に通っていない人も大勢いる。だったら、誰もが魔力を持っているのかもと考えられない?」


 そう、戦士であれ、他の職業であれ誰もが魔力は持っていると記されている。だけど魔力適性では、魔力がある人とない人で別れる。それはなんでなんだろうと思った。俺が言ったことに対して、エルも首を傾げながら言った。


「そう言えばそうね。まあそんなことどうでもいいわ。私も練習に混ぜてくれない?」


 俺はミシェルの方を向くと、首を縦に振ってくれたので了承する。


「じゃあ決まりね!」

「午前の授業が終わったらいつものところに行くから、一緒に行こう」

「うん」


 そう言って午前の授業を受け始めた。その時、ティアが囁いてくる。


{リアムやミシェルちゃんがなんで魔力ゼロって言われたかわかったわ}

{え?}

{さっきリアムが言っていたけど、戦士にでも魔力はあるって言われているよね?}

{あぁ}


 そこからどうやってわかったんだろう。


{各職業によって魔力の性質が違うのよ。だからリアムたちは魔力ゼロって判定されたわけ}

{でも俺たちは、ティアたちと契約して魔法を使えている以上、みんなと一緒で魔法使いってことじゃないのか?}

{そう。でも普通の魔法使いとは違うの。リアムやミシェルちゃんは現代の魔法使いでは無く、過去の魔法使いってこと}

{は?}


 過去の魔法使い? そんなの聞いたことないぞ? まず現代と過去で魔法使いが違うのか? そしたら、今までの文献が間違っていることになってしまうじゃないか。


{昔は、精霊と契約して魔法を使うのが自然だったの。でも今は、各個人で魔力を持っているから精霊と契約をしなくても魔法を使うことができる}

{じゃあ俺たちは、過去の人たちの魔力を持っていて、現代の魔力はもっていないってこと?}

{う~ん。多分リアムは、現代の魔力もほんの少しはもっているわ。あの機械では判定できないレベルだけどね}


(......)


 結局、現代の魔力はほぼゼロってことか。


{でも、なんで持っていないのかと思わない? 多分だけど過去の魔力を持ちすぎて、体が耐え切れないから現代の魔力がほぼ無いんじゃない?}

{あ~ね}

{だから、誰にでも魔力は持っていると考えられるわ。ただ魔力の性質が違うだけ}


 それを聞いて俺は納得してしまった。


 ティアの話を聞いていたら、午前の授業が終わっていた。


 そして俺とミシェル、エルでいつもの練習場所に向かった時、マット兄さんが待ち構えていた。

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