第7話 クラス代表
試合開始の合図後、なぜかエルさんが俺に話しかけてきた。
「あなたが強いのはわかっているわ。でも負けるわけにはいかないの」
「......」
(なんで負けるわけにはいかないんだ?)
はっきり言って、この試合が負けたところで模擬戦のクラス代表にはなれるはずだ。だったら別に負けてもいいんじゃないか? それとも他に何か理由でもあるのか? まあ今考えても何か答えができるわけじゃないしいいか......。
「不意打ちとかで勝ちたくないから、十秒後に戦闘開始ってことでいい?」
「了解」
そして戦闘が開始された。エルさんは正面から
完璧には避けることができず、右腕に食らってしまう。その後も、防戦一方の攻防が繰り広げられた。そして数分経った時、ティアが話しかけてくる。
{今のリアムでもあの子に勝つのは難しいかもしれない}
{だったらどうすればいい?}
ティアが言うのだから、今の俺がエルさんに勝つのは厳しいのかもしれない。
{それを言ってしまったら、リアムが成長できないと思う。だからリアム自身で考えて。でもヒントとして、あの子の行動をきちんと見た方がいいわ}
{わかった}
ティアの言う通り、エルさんとどのように戦えばいいか聞いてしまったら、俺は本当の意味で成長できない。今後考えることを辞めて、ティアに聞くだけ。そうなったら、もう俺たちは対等な立場とは言えない。
ティアに言われた通り、俺はエルさんがどのように攻撃してくるかを観察した。
まず最初に
そして話しかけてきた。
「もう諦めたら?」
「いや、諦めない」
「そう」
エルさんは、俺が避けられないように三つの
(今までの練習を思い出せ。俺ならできるはずだ)
俺は正面の
(よし! できた)
するとエルさんが驚きながらこちらを見てきた。
「さっきまで同時に魔法を使うことができなかったのに......」
エルさんが驚いたのも一瞬で、先程と同様に魔法を使ってきた。俺も同様に魔法を使って、エルさんの魔法をかき消す。そこから上下左右、様々な方法で攻撃してきたが、それをうまくかき消した。そして攻守が変わった。
俺とエルさんでは、魔法の威力が違う。今までエルさんの巧みな技で威力を制限しつつ魔法を使っていた。でも、慣れてしまえばこっちのもの。そこで、一つ思い浮かぶ。
(同時に使えるってことはもしかして)
俺は先程同様に、右手に
(予想通り!)
そして、エルさんに竜巻を放とうとした。その時、アリーシャ先生が炎の竜巻をかき消してしまった。
(え?)
俺とエルさん、そしてクラスメイト全員が驚いた表情でアリーシャ先生を見た。
「勝者リアム」
俺が勝った合図を出されたところで、エルさんがアリーシャ先生に言った。
「ど、どうしてですか!」
「リアムくんが使った魔法、あれをエルさんは防ぐことができましたか?」
「......」
「あれは、二階級魔法です。あれを止めるにはエルさんも二階級魔法が最低限使えなければいけません。ですが今のエルさんに、二階級魔法が使えるとは思えません」
すると、エルさんが俯きながら俺に握手を仕向けてくる。
「負けたわ。あなたが二階級魔法を使えるとはね」
「あ、うん」
こうしてFクラスの模擬戦が終わった。クラス代表を発表するのは、明日になったので、みんな自宅に帰った。
俺も学生寮に戻ったら、寮長が部屋を案内してくれて、自分の部屋に入った。少し時間が経ったところで、ティアが話しかけてきた。
{リアムって中級魔法が使えたんだね}
{中級魔法?}
{そう。こっちで言えば二階級魔法ってこと。初級魔法は三階級魔法ね}
{あぁ~。まあなんか使えた}
すると、少し自慢げに言ってくる。
{私って全属性の適性があるから中級魔法を使う時、威力のばらつきが無いんだ!}
{ふ~ん}
いや、威力のばらつきとか言われてもわからないよ。この前まで魔法が使えなかったし、二階級魔法だって思いついて、すぐ実行しただけなんだから。
{まあ簡単に言えば、中級魔法が使いやすいってこと。普通なら威力を合わせて使わなくちゃ、どちらか強い方に影響されて、弱い方がかき消されちゃうから}
{そうなんだ}
じゃあ、運が良くて使えたってことか。
{まあこっから一緒に頑張ろうね。この学園でまずは一番になってもらわなくちゃ}
{は?}
いやいや、なんで俺が一番にならなくちゃいけないんだよ。
{だって私の目標には、リアムが欠かせない。だけどリアムが弱すぎると困るしね}
{まあ......}
{それにバカにされたままじゃ嫌じゃない?}
{うん......}
{じゃあお互い頑張ろうね}
(俺も成長しなくちゃいけないのはもっともだな)
ティアと対等な立場である以上、俺も強くならなくちゃティアの力を存分に使うことができないから。
そして次の日。アリーシャ先生が紙を黒板に張り付けて言う。
「クラス代表はこの三人です」
案の定、俺とミシェル、エルさんであった。俺とミシェルが喜んでいる時、一人の男子がこっちを睨んできているのに、まだ俺たちは気づくことができなかった。
★
【☆☆☆→★★★】で評価ができるので、もしよろしければお願いします!
モチベーション向上につながります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます