転生少女と学園2
何でしょう?揉め事でしょうか?見てみると、男子生徒が女子と何やらトラブっています。
「お願い!この子にひどいことせんといて!」
「あぁん?よくそんなこと言えるな。やっぱりてめえもその薄汚え
これはかなり深刻そうですね。しかし同級生を魔物呼ばわりとはいただけませんね。しかも周りの人間も見てるだけですか。私の前世のトラウマと見事にマッチしましたね。つまりはキレました。
「ちょっとそこの男子、一体何事ですか?」
「あ?誰だてめえ?」
「さっきから何やら騒がしくて目障りです。その子に何か恨みでも?」
「るっせえ!俺はこの魔物どもが人間の国にいるのが許せねえだけだ!」
「ヒッ!」
そう言って彼は女子を指差します。近くで見てみると、その子は銀色の髪で傍に何故か真っ白な毛並みの子犬を連れていました。怯えています。
「えーと……この子たちが魔物、ですか?私にはただの女の子と可愛いワンちゃんにしか見えないのですが」
「馬鹿かてめえは!その髪の色はどう見ても吸血鬼の特徴だろ。それに何よりそいつが連れてるのはフェンリルだぞ、紛うことなき魔物だ!」
ほぅ、人種差別にしか聞こえない発言がありましたね。しかもこのワンちゃんが魔物ですか。しかし私は魔物について詳しくありません。もしもこの子たちが本当に魔物で、ただ悪意がない存在ならば「この子たちは魔物じゃない!」なんて擁護は逆効果です。では、
私は掛けている伊達眼鏡に魔力を少し注ぎ込みます。この眼鏡が持つスキル、それは〈鑑定〉です。このスキルがあれば種族や名前、スキルまであっさり分かるのです!
(〈鑑定〉!)
そして鑑定の結果は
イデシメ(人間)
状態:健康
スキル:
魔物を使役できる。ただし自分よりあまりに強い魔物には使用不可。使役している魔物とはある程度会話も可能。
身体能力:C
魔力量:B
魔法:未取得
コヨ(フェンリル)
状態:使役 (イデシメ)
スキル:
身体能力を強化する。
身体能力:A
魔力量:A
魔法:未取得
どうやらこのワンちゃんは本当に魔物のようです。にしてもフェンリルですか……強そうです。女の子の方は人間でしたね。髪の色のせいでフェイクニュースってやつを流されているようです。そしてスキルがすごいですね。いわゆる魔物使いってやつですか。どうりでフェンリルを連れているわけです。
「イデシメさんは人間ですよ。連れているワンちゃんは確かに魔物ですが、イデシメさんのお友達なので悪いことはしないと思います」
「え……何で私の名前を?」
「魔物と友達だ?余計怪しいんだよ!だいたい誰だてめえは?急にしゃしゃり出てきて魔物どもを庇うとは何のつもりだ!」
「私の名前はリリィです。この子たちの味方をしているのはその方が正しいと思ったからです。あとイデシメさんは人間です。〈鑑定〉で確かめたので間違いありません」
「〈鑑定〉だと?チッ、スキルだけは使えるやつ持ちやがって」
さっきから生意気な方ですね。大体他人に名前を訊いておいて自分は名乗らないとは何様ですか。仕方ありませんね、〈鑑定〉で見てやりましょう。本来ならプライバシーを重んじますが、その程度のことには目を瞑れるくらい私の中でのコイツの好感度は世界恐慌しているのです。
(やってしまいましょう。〈鑑定〉)
カール・ツインステアーズ(人間)
状態:健康
スキル:交渉
相手が自分の発言を受け入れやすくなる。
身体能力:B
魔力量:A
魔法:炎魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、記憶魔法
これは驚きました。魔力量はAですし、使える魔法の量がとんでもないです。記憶魔法に関しては聞いたことすらありません。
魔法は生まれ持ったスキルとは違い、勉強し、修行することで習得できます。逆に言えば、これだけの魔法を覚えているということは、彼は相当努力をしたのでしょう。よろしい、その点は評価しましょう。
あと気になるのは名前ですね。この世界の住人って姓がないのだと思っていました。しかし彼はきっちりと名字を持っています。もしかして貴い身分だったりするのでしょうか?
「……ふむふむなるほど、カール・ツインステアーズさんというんですね。いけませんよ、他人に名前を訊くならまずはそちらが名乗らないと……」
「黙れ」
おや、どうしたのでしょう?もはや怒りを通り越して殺意を感じます。
「俺はただのカールだ。2度とその名で呼ぶんじゃない。いいな?」
ううむ……さては実家と何かあったのでしょう。まあ私には関係ないし、追求はしなくていいでしょう。それより今は
「そうですか、失礼しました。あ、それとイデシメさん、置いてけぼりにしてごめんなさい。あなたはこれからどうしたいですか?」
「へ?え、ええっと……」
あちゃちゃ、こりゃ急に話しかけて困らせてしまいましたね。
「あ、自己紹介がまだでしたね。私の名前はリリィ。あなたのことは〈鑑定〉で見させてもらいました。人間だと証明したかったんです、勝手にごめんなさい」
「あ……うん、よろしく。私はイデシメ、こっちの子はコヨ、フェンリルでぇ。知っちゅうろうけど」
訛ってますね。お登りさんでしょうか。まあここは王都ですし、色んな地方からやってきた人がいてもおかしくありません。
「イデシメさん、あなたとコヨちゃんが悪いやつじゃないって分かってます。それであなたを助けたいと思いました。だから教えて下さい、あなたはこちらのカール君をどうしたいですか?仲良くなりたいでも叩きのめしてほしいでもご自由に言っちゃってください」
「ええと……」
「おい、勝手に何話してんだ?」
「黙っててください」
「うっ!」
少し強めに言ってしまいました。そういえば、先程から周りの連中がこちらを見ていますね。まあ間に挟まってはこないでしょうけど、イデシメさんたちを困らせてしまいます。
「……悪目立ちしちゃいましたね。場所を変えましょう。さあ、こっちです」
「へ?」
「ぐあっ、な、何だこの馬鹿力⁉︎」
「アウッ、アウッ!」
2人を中庭まで引っ張っていきます。その後ろをコヨちゃんがついてきます。可愛いです。
「さて、続きといたししましょう。イデシメさん、こいつどうします?」
「そ、その……」
「おいてめえ、うぜえぞ」
カール君がやかましいですね。そんなことを思っていると、イデシメさんが答えを出しました。
「その……私のこと、怖がらんといてほしい。あと、友達に、なりたい」
「……は?てめえ何言ってんだ?」
「わ、私、こんな見た目とスキルやき、みんなと仲良くしてもらえんかったがぁ。だから、
最後は語尾が強かったですね。勇気を出して言ってくれたんでしょう。それに、私とも仲良くして欲しいと言ってくれました。だったら、
「2人とも、この後暇ですか?」
「「え?」」
「ウチに来ませんか?いいえ、行きましょう!」
「うわ、ちょっと……」
「引っ張るんじゃねーー!」
「アウーーー!」
2人を引っ張りながら、商店街を抜けて家まで爆走します。途中で何度か、近所の知り合いの方々が私たちのことを眺めていました。
「母さん、父さん、ただいまー!」
「あらリリィ、おかえり。ってその子たちどうしたの?」
「紹介するね、こっちがイデシメさん、こっちがカール君、この子はイデシメさんの友達のコヨちゃん。私の友達だよ!」
「まあ!リリィのお友達ですって!ゴードン、リリィがお友達を連れてきたわよーーー!」
母さんがすごい勢いで戻って行きました。
「うふふ、まさかリリィがもう友達を連れてくるなんて」
「イデシメにカールといったな。それでそっちのワンコがコヨか」
「よ、よろしく、お願いします」
「カールです。初めまして」
「にしても魔物を従えるスキルなんて珍しいな。しかも子供とはいえフェンリルとは」
「あの、私のこと、怖くないがぁ?魔物連れちょってこんな髪ながでぇ?」
「うーん……ひょっとして、吸血鬼みたいだからか?」
「うん」
そばで話を聞いていたカール君が眉間にシワを寄せ始めます。
「イデシメさんは人間だよ」
「分かってるよ。だがまあ、どっちでもいいだろ」
「ええ、イデシメちゃんが人間でも吸血鬼でも関係ないわ。コヨちゃんこんなに可愛くていい子なんだし」
「え?」
カール君は目を丸くしました。
「あの、2人は何でそんなにあっさり信用できるんですか?」
「あら、もしかしてカール君ってイデシメちゃんのこと嫌い?」
「……!」
「う……そ、それは……」
母さんがとてつもなくズバリと切り込みました。まあこれを期待したんですが。私が何を言ってもキレるだけだったでしょうから。
「ふふ、確かにイデシメちゃんの髪の色は吸血鬼みたいだものね。」
「じゃあ……どうして……」
「実はね、私のご先祖様は吸血鬼に助けられたの。」
「……え?」
「200年以上前だったかしら、ご先祖様の住んでた街が魔物に襲われたの。そしたらね、人間たちと一緒に1人の吸血鬼が助けに来てくれたの」
「吸血鬼が?」
「ええそうよ。その吸血鬼がいなかったらご先祖様は生きていなかったんですって。みんな信じてくれないけど。ねえカール君、イデシメちゃんとコヨちゃんはあなたに何かした?」
「えっと……何も……」
「そうよね。あのねカール君、人間にだって悪い奴がいるみたいに、優しい魔物だっているのよ。もちろんイデシメちゃんは人間だけど。カール君」
「はい」
「人間とか魔物とかじゃなくて、もっと
「……!」
母さんは終始優しく話しかけていました。カール君は最後の言葉に何かを感じたようにハッとしていました。
「わかりました。ありがとうございます。なあ、イデシメ」
「えっと、うん、何?」
「えっと……悪かったよ、お前たちのこといじめて」
「気にせんでええき」
「リリィも……ありがとな。いろいろと」
「いえいえ、気にしないでください」
「それで、その、2人が良ければ……友達に、なってくれ……」
「はい、もちろんです!」
「そうで!もともとは私が友達になりたいって言ったがやき。」
「……おう、よろしくな!」
これが私たち3人の出会いでした。
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