七夕にあるかもしれないJKの会話
ふつれ
第1話
「さて問題です。今日は何の日でしょ~か!」
何でもない平日の放課後、部活の時間。岬は唐突にクイズを始めた。
私たちが所属している美術部は、めちゃめちゃにゆるゆるな部活だった。中には真剣にコンクールに挑戦しようとしている子もいたけれど、私たちを含む大多数派は、気が向けば絵を描くこともあるし、そうでなければテキトーに駄弁るだけ、なんて感じだった。
私と岬は見るアニメや読むマンガの趣味が合ったので、部活の時間はもっぱら「最近の好きなキャラ」談義に花を咲かせているのだった。
そんなところに、脈絡もなくさっきのクイズである。私は少しの間考えて、忘れていたことを思い出した。
「そういえば、今日は七夕だったね」
高校生ともなると、この手の年中行事とはだんだんと無縁になってくる。特に七夕なんて、数ある年中行事の中でも最も印象の薄いものの一つだった。
よく思い出せたものだ、えらいえらい、と自分を誉めていると、
「ぶっぶー!不正解です」
岬からのバッテンをもらった。
「いやいや、間違いってことはないでしょ、今日は本当に七月七日なんだから」
「あたしが求めていた答えとは違うので不正解でーす」
そんな横暴な……
「で、答えは何なの?」
「正解は、あたしの誕生日!でした~」
「知らんがな~」
七夕が誕生日ってあれかな?何かのアニメキャラかな?
「ということで、祝って祝って!」
「って急に言われてもねぇ」
知らなかったんだから何か用意があるわけもない。
何となく周りに目を配ると、画用紙が見つかった。美術部の部活動中なのだから画用紙はあって当然である。
私は色えんぴつを取ってそこにさらさらとあるものを描きつける。さすが美術部員の手際の良さ!と言いたいところだけれど、正直大したものは描いていない。描き上がって、岬に渡した。
「はい、バースデーケーキ」
「えーーー」
見るからに不服そうな岬。まあ本当にただのケーキの絵だしね。
仕方ないから、最近の岬の推しキャラでも脇に描いてあげようかと思って、画用紙を回収しようとしたけれど、岬の手がその紙を離さなかった。
「そんなのより、今日の帰り、駅前でクレープ奢ってほしいなぁ」
岬の猫なで声に、思わず噴き出す。
放課後に一緒にクレープを食べるなんて、私たちそんなキャラだったっけ。いつも部活中につるんでいるだけで、そもそも二人で遊びに出掛けたこともないのに。
でも、たまには良いかもしれないと思った。
七夕は、一年に一度だけ、織姫と彦星が会うことができる日。私たちが、普段しないようなことをしたって、なんだか許される気がした。
七夕にあるかもしれないJKの会話 ふつれ @ffuture23
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