私の周りの人々****「私の・・・」シリーズ番外編 『僕らはみんな生きている~誰もが自分の主人公』
平行宇宙
少年ゴーダンとエッセルの出会い
村の最後
ジーアネマ領にある小さな村。
そこは砂漠が広がるビレディオ領にほど近い村だった。
何もない貧しい村。
だが、砂漠とは違い、多少の緑もある。
村人は、主に狩人として魔物を狩り、または、その狩った魔物を素材にし、またはその素材を武器や防具、生活道具に加工する、そんな風にして細々と暮らしていた。
この村に、ゴーダンという名の少年がいた。
同年代の子供達よりは、少し大きな体。
それに見合って、身体能力も優れていた。
気がつくとガキ大将のようになっていて、子供達を引き連れて、小さな獲物を狙う、そんないっぱしの狩人気取りの少年だった。
5歳にもなると、その力は大人達も認めるところとなる。
そもそも、貧しい村だ。子供だとて働けるなら働いた方がいい。
その頃になると、器用に木の上に登っては、投石で魔物を惑わし、大人達の狩りの手伝いをするようになっていた。
自分も父親のように、強く頼りになる、そんな狩人になる、そんな夢を抱いている、少年ゴーダンだった。
しかし、その夢は間もなく砕かれることになる。
ある日のこと。
ゴーダンは、その日も父達と狩りに出ていた。
狩りは順調。父や仲間達と大いに満足していたところ、とある狩人が異変を感じ、注意を促した。
「火の匂いがする。」
大人達は、ゴーダンや他にも同行していた子供達に、その場を動かないように言い、木の上での待機を命じた。
「大人の誰かがいいと言うまで、絶対に動くな。魔物が襲ってきた場合、臨時の頭は、ゴーダンお前に任せる。」
狩人頭であったゴーダンの父は、その場にいた子供達にそう言った。5歳のゴーダンは最年長ではないものの、子供達の中ではリーダーのような立ち位置。将来は父の後を継ぐだろう、そう村人に思われていたため、子供達に否やはない。
神妙な顔をして、頷く子供達。
父達は、顔を見合わせて頷くと、村へ向かって走り去っていった。
それが、父達を見た最後となる。
ゴーダンと5人の子供達は、命じられてた通り、木の上に隠れていた。
時折かすかに聞こえてくる、雄叫びや怒号の声。
鼻をつく、燃える匂い。
何度となく、飛び出しそうになる子供達。
が、ゴーダンは彼らを必死になだめつつ、じっと大人達が帰って来るのを待った。
怒号が聞こえなくなって、しばらくの後。
夜のとばりも降りてきた。
魔物の跋扈する森の中で夜を過ごすのは危険だ。
「戻ろう。」
ゴーダンは、そう結論した。
村は、燻っていた。
あちこちから黒い煙が立ち上る。
鍛冶屋だろうか。
赤いきらめきが、真っ黒い煙の中で、チロチロと舞っている。
「あ、あ、ああああああ!」
誰が叫んだのか。
それをきっかけに呆然としていた子供達は、我先にと村へ、自分の家へと、走り出した。
ゴーダンも、家へと向かって走る。
「・・・父さん!」
途中、大きな剣を持ち仁王立ちする父を見つけて、走り寄る。
?
「父・・・・さ・・ん・・?」
それは仁王立ちして、目をかっと開き、絶対にこの先には行かせない、と踏ん張る、事切れた、父の姿だった。
村は、悲惨、としか言いようがなかった。
たくさんの見知った人々が恐怖の顔をして、惨殺されていた。
母も、祖母も、重なるように背中を切られ、腹を切られ、顔は陥没している。
他も似たようなものだ。
老いも若きも、みんな殺された。
生きたまま、炎に放り込まれたような人も・・・
下半身むき出しにされて、おそらくは陵辱されただろう人も・・・
ゴーダンたち6人を除き、そこに息をする者はいない。
言葉もないまま、6人は、眠れぬ一夜を村で過ごした。
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