☆ 九十歳レトロカフェでの3つの勘違い物語
すどう零
第1話 冤罪真っ只中さわやか青年
私の名はまゆか 二十歳を少し過ぎた年齢。
世間では 成人式も済ませ大人とみられて当然の年齢だけどね。心はまだまだ好奇心一杯の無邪気な子供。だから多少の暴言も、まあ若気の至りと大目にみてほしい。
私の現在の仕事は、配達業。
つい以前まではスーパーの鮮魚コーナーでバイトしてたんだけど、コロナ渦で契約満了という名の解雇。もっともその鮮魚コーナーは法律違反をやらかし、客足が減少するのは当たり前だが。
しかし、愚痴をこぼしているヒマはない。できることから始めなきゃというポジティブ精神で、配達業を始めたの。
最近になって通勤路の帰り、毎日通るレトロ満載カフェの前で、後期高齢者をとうに過ぎた女性が私に挨拶してくる。
コロナ渦で、近くのカフェ二店共、老舗ながら閉店を迎えてしまった。
「まあ、お入りよ。ここのカフェはこの通りレトロだけどね、一度ネットでも宣伝さ
れたんだよ」の声に魅かれて薄暗いながらも、窓から陽のさす店内に入った。
高齢者女性はなんと九十歳だという。
かちわり氷のアイスブラックコーヒーはさすがに香り高く、美味しかった。
「さすがに、ネットで宣伝されるだけの価値はありますね」
というと、女性は身の上話を始めた。
「実はね、この店は、嫁にいった娘が二昔前から経営していた店なのよ。
今は、一人息子の嫁が行方不明になって、私は孫と生活しているの」
そうすると、奥から三浦春馬に似たさわやかイケメンが私の前に座った。
いきなり「僕のこと 知ってるでしょう。二年前、ネットで容疑者扱いされた張本人ですよ」
えっ、なんの容疑者? とあからさまに聞くのは、あまりにも失礼であり、デリカシーがなさすぎる。
しかし、初対面の私にこういったことを聞くということは、ある意味ネットで顔と実名が拡散された有名人なのだろう。
「あなたが、この女性のお孫さんですか。
うーん、あまり思い出せないけど、そういえば二十歳を少し過ぎたくらいのイケメン青年が容疑者として、顔までアップされてたのが印象に残ってますね」
青年は、照れくさそうに頭を掻いた。
「そう、僕はよく三浦春馬に似ていると言われますが、彼は自殺しちゃいましたね。僕も、冤罪をかけられ容疑者扱いされたときは、真剣に自殺を考えましたよ。誰かが、僕を殺してくれないかなと願ったくらいですよ」
そういえば、その事件で容疑者扱いされた男性は、犯行を否定しているという幕切れで、ネットにアップされることもなくなった。
本当にこのさわやか青年が、悪党なのだろうかと不思議に思い、つい青年の顔をまじまじと見つめてしまった。
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