元社畜、スキル「勇者4分の1」「森林」でボッチな姫神様と異世界ライフ。

よちよちのすけ

はじまりの転移 1-1

深夜一時、コンビニエンスストアから溜息をつきながら、明日までの資料作り(施工費水増し)の最終チェックの段取りを考えながらオフィスに戻る社畜歴14年の自分・・・。はぁ・・・。


 ガチャ オフィスのドアを開け半歩踏み込み唖然とし硬直する自分・・・。どうする?どうする?? 


一本の蝋燭の明かりに浮かぶ煌びやかなドレスを着た若い女性「よくぞ、お越しくださいました勇者様!さあさあ、こちらへ」と満面の魅力的な笑顔で手に首輪を持ち俺を見て誘う。


 焦る自分、はっきり自覚出来るほど、急速に冷や汗が吹き上がり、体温が上がり


 こ、これは、階層部屋間違いからの深夜一時からの隣部署の応援接待コスプレなりきりイベントの発生??? 

いやいやいや社畜レベル高過ぎでしょ?王冠みたいの被ってる金髪のおっさんはリニアモーター関連の官僚か?無理無理無理・・・接待経験ゼロの自分・・・即時撤退でしょ


「あっ王様その素晴らしい王冠、王様ほど相応しい御方はいませんね!でゅわ(くっ噛んだか)明日のダム関連資料作り終わってないんでぇ失礼します!(後日どんだけ怒られても構わない)」


と下がろうとした瞬間!な何!足元ではなく、背中側に落下しだす浮遊感を味わい、背中方向に落下。咄嗟に左手でドアの壁側を掴み片手でぶら下がる・・・。


 「だからこの扉式勇者召喚術は低コストでも反対だって言ったじゃん」と王様ぽい人横の若い男性


 「ああああ・・借金まみれから、更に借金しての国家予算三年分の魔石が・・無駄に無駄にぃ・・」と王様ぽい人


 「失敗よ!失敗よ!プランB夜逃げしかないわ!兄さん父さん!」と魅力的な女性 


 「隣国に残してある前国王の愛人宅へ今すぐ出発じゃ・・・・」などと


罵り合う声を聞きながら、親子プレイって・・・ 意識を失っていく自分。




 意識が戻ってくる自分、ん?目を開ける前から解かる違和感??どこだここ?そう匂いがオカシイ・・・未体験な濃厚な森林の空気が肺を満たしていく。

ああ空気が美味い美味いなぁと味わいながら先ほどの高レベル社畜イベントを徐々に思い出す・・・。自分も魂はほぼ捨ててて肉体はまだ捨ててなかったなと、ほぼ社畜ゾンビな自分を顧みる。目を開ける恐怖を感じながら少しずつ目を薄っすらと夢であってくれ、夢であってくれと開ける。

「うわぁ・・・やっぱり夢じゃないじゃん、(背中冷たいし)空が空からして違う・・・」

と呟き、ゆっくり立ち上がりギギギと唖然としながら周りを見回す・・・。「どこ?ここどこよ??」と小さく呟きながら、見たことのない植生の森の樹々を見る。


両手を頭に自然ともっていき頭をかかえようとした瞬間!右手は頭に左手は空ぶり肩に当たる「へっ?」唖然とする俺・・・・。左手の手のひら半分ない状態の手のひらを見つめる・・・。いろいろ理解が追い付かなく15分ほど茫然自失、忘我状態からようやく再起動する自分。もう社畜じゃないんだとポロポロと涙が止まらない。


 まず手がない。肌がやや青黒い・・・。明らかに地球じゃなく弐本の可能性なし・・・。


 扉式勇者召喚術うんぬんが本当なら異世界なのか?まさか弐本政府が出版している【異世界白書20xx】の実際あった事例研究に書いてあった中の一つと一緒ななか・・・?さっきのは自分が異世界召喚されていたんだと受け入れよう。


 街を探すと身柄拘束可能性あり、召喚された場所の近くの森の可能性が怖い。金髪女性が持ってた首輪・・あれは異世界小説からの知識で隷属の首輪みたいのだろ。10年山で独りで修業は嫌だけど、ある程度レベル上げ・・・。ポロポロと涙を溢しながらステータスオープン!!


【名前】  ミツグ

【種族】  ヒト

【性別 】 オス

【職業】  ---

【レベル】 1

【スキル】 

【ユニークスキル】

 やや鑑定

 やや収納

 勇者4分の1

 ---

 ---

 ---


「うぉーー?4分の1勇者って何?ややって何???弱いよね?」


と繰り返し呟いたあと、サバイバル方針を考えることにする。まず、魔法を使えるみたいなので(やや)レベルでも水魔法で水の確保。魔法練習期間は水魔法は半日で獲得できなければ水場探し。食料は【やや鑑定】だのみで植物ならなんでも食べる方針。寝る場所の確保は地面よりましという考えで樹の上にしてちょうどいいのを探す。左手の平半分ない状態かなり不便だと観察する。親指だけ根元の関節一つ残っている。何らかの魔法で義手もどきができるようになればなんとかなると自分で自分を励ます。


 そう自分は元の世界でサバイバル慣れしているのである。仕事の都合で週末があれば一泊二日で山の中で野宿する生活をずっと続けている。何故かって?喘息とアトピー性皮膚炎の両方持ちの重度アレルギーで、特にハウスダスト二項目、イエダニ2種類ともにクラス6の最悪持ちなので、屋内にいるより体調がいいという理由でアウトドアからより進んで山の中で生活している。

そう、ここが異世界で自分の身体が各種アレルギー症状から解放されているのなら最高だと、片手がなくても最高!!残念なのは、徹夜勤務明け、そのまま富士樹海二泊三日予定のキャンプセット、トレッキングシューズがオフィスに残ったまま、よれよれのスーツ姿・・・。


 とりあえず、水魔法のできるかできないかの練習を樹の根元に座り込み、体内の魔力をネット異世界小説の知識をたよりに探し始める。体内をゆっくり一秒で七センチ程動く、もやーとした今まで体内になかった熱のカタマリを見つける。動かせる一秒7センチのペースで左手の半分になっている手のひらになんとか動かしてきて、凝縮するイメージで手から水を出すイメージを繰り返し繰り返し思い描く。


「おおっl」水がチョロチョロと手から出る。感度しつつも集中を維持し、この世界で初めて水を飲み、胃に染み渡っていくのを味わう。できたよ!頭の中はすぐに次の行動を食料か寝床かで考えだす。

結論は動かないことにした。モンスターがいるかもという恐怖とこの場所は縁起がいい!という屁理屈を天稟にかけ、この場所だから魔法が使えたかもしれないとの考えが頭に浮かんだ瞬間決断した。そして樹に登れない自分に気が付いた・・・・。そして自分の周囲の植物を見て集中して【やや鑑定】!なんとか生食可の草を見つけたので、体内魔力の循環を速くする練習をしようと樹の根元に座り込む。片手しかないという焦りから魔法の使用という可能性にしがみつく自分。


 座り込み魔力操作の練習を意識する。座り込んでいる自分自身全体を意識した時、お尻の下の地面、もたれかかっている異世界の樹が同時に意識されてしまったので、魔力をまず、お尻にゆっくりゆっくい、集め触れている地面に少しずつ馴染ませていく。深呼吸を何度もして身体に戻ってくるだけ地面に馴染ませた魔力をゆっくりゆっくり引き戻す。汗をぬぐい、今度は背中にゆっくりゆっくり魔力を集めもたれかかっている樹に少しずつ馴染ませていく。同じように時間をかけて戻ってくるだけ魔力を身体に引き戻す。

 

飽きるまでこの魔力操作練習を続けることにする。あわよくば土魔法と植物魔法も可能性を探りたいという考えである。ネット異世界小説をいろいろ読んでいて自分が使いたい魔法ジャンル、水、土、植物の系統だと妄想していたので。何度も何度も繰り返す魔力の移動、おにぎり、もう食べれないなあという雑念がはらえなく、おにぎり雑念がむくむくと時間の経過とともに大きくなり休憩がてら水を出し飲む。


 ユニークスキル【勇者4分の1】かぁ、どう判断するか?普通に劣化版に思える。前の世界の人生、お世辞にも真っ当な生き方していなかったと自覚しているので・・・。浅い知識にある勇者のもってそうな能力、全属性魔法は自分には無い。取得可能範囲は勇者より少ない。近接物理戦闘能力はかなり弱そう。神官職、回復職と同程度以下だわな。馬車が魔物に襲われてる救出テンプレ成功する確率4分の1以下か?。全体的にいろいろ出来そうだけど突き抜けて何か極めるのは無理そう。マイナス思考に傾いてきたので魔力操作練習を再開する。その前に

「ステータスオーブン!」「グフ【土魔法】きたぁ!!!」 

次の休憩で野営準備の予定。


 じわじわとお腹が空いてくるのを自覚しながら、雑念おにぎりを振り払えないまま、身体の中の魔力を動かせる速度が大分上がったと手ごたえを感じ始めるくらい繰り返した頃、自分の頭の上3mから4mくらいの高さで魔力がふわっとと膨らむ気配を感じ、頭上を見上げ、唖然とする。

「あぁぁ、おにぎりが実った・・・」

 ・・・・再起動して、おにぎりをどうやって収穫するか考えながら、頭の中はこの自分がおにぎりを樹に実らす魔法を覚えていたら?その意味、いやいや人類社会的意味のあまりにも大きさに静かに身震いを始めていた。この異世界なら普通なのか?いや異常なのか? 誰もいない深い森の中の午後遅く、おにぎりを見上げ、口をぽかんと開けぼんやり、おにぎりを眺め続ける・・・。

 


 

 

 

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