人気絶頂アイドルが一般男性とお付き合いし、結婚する確率*番外編*

涼月一那

第1話「人気アイドルとスーパーへ特売卵を買いに行ってみた」

「なっ……今日は「あしながおじさん」で卵税込98円だとっ!しかもお客様感謝デーで合計金額から更に5%引き……何て破壊力のあるダブルコンボなんだ。卵で客を集め、更に他にも不要不急な物まで買わせて散財させる。店長、恐ろしい子っ!」


「夕陽さん、台詞長いよ…現代っ子はそんな長台詞見た瞬間目を逸らしちゃうよ」


「うるさい。昭和風味のアイドルめ。俺は今、それどころではないんだ」


ある平和な日曜日の早朝。

一般企業に勤める23歳独身の一般男性、真鍋夕陽は、日曜日の冴えないお父さんのように朝刊の上で爪を切っていた。


彼のもう一つの趣味は新聞を読む事である。

パソコンやスマホが普及した今でも、彼はしっかり朝刊と夕刊を契約していた。

半分契約更新時に貰えるお米が目当てでもあるのだが。


その時、夕陽の視界にスーパーのチラシが飛び込んできた。


今時珍しい手書きの単色コピーで作成されたチラシには「スーパーあしながおじさん、本日特売日。卵税込98円」…と大々的に宣伝している。


スーパーあしながおじさんとは、夕陽の住むマンションの近所にある個人経営のスーパーで、こうして時々思いもよらないビッグな特売サプライズがあるのだ。


「これだから朝の広告チェックは油断ならないんだよなぁ」


爪を切り終えた夕陽は、ローテーブルに付属された引き出しから赤のサインペンを出すと、早速買う物に赤丸を入れ始めた。


「……夕陽さん、さっきからかなりドン引きなんですけど」


そんな夕陽を異界の者でも見るように引き攣った顔で見ているのは、何とアイドルグループ、トロピカルエースのメンバー、永瀬みなみだ。


ちょうど点けているテレビからも朝のワイドショーの合間に彼女たちの出演するCMが放映されている。

その本人がこの所帯じみた、ちょっと顔がいいだけのごくごく普通のサラリーマンの家にいる奇跡。

しかも二人は現在交際中。

契約恋愛や一方的な監禁でもなく両思いの普通のカップルとしてお付き合いしているのだ。


だが、今目の前にいるのはボサボサの金髪にピンク色のジャージ、思い切り親指がおはようしているソックスを履いた中学生のような装備の女子だ。


これを見て、今CMで新商品のアイスを手に眩しい笑顔を浮かべているアイドルには見えないだろう。

いや、信じたくない。


「よし、俺はこれからスーパーの特売に行くぞ!」


「えっ、どういう事?私は?」


チラシにチェックを終えると、夕陽はすぐに出かける支度を始める。


「お前?………お前はいるとややこしくなるから留守番してろ」


「ちょっ…ひどっ!私も行くよ。連れてって」


まるで母親の買い物に同行したくて駄々を捏ねる子供である。

くどいようだが、彼女はアイドルで恋人だ。


夕陽はしばらくじっと考える素振りを見せる。


「行くか?」


「うん。行こう!いえーっ!」



…そういう事になった。



続く?


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