愛を歌うシスターとデスゲーム〜ハズレ能力【古い武器と喋る能力】を持つ俺。追放され最強の聖剣を手に入れる〜
水ManJu
理不尽な追放
「おい、クロード。お前クビだ。今すぐここから消えてくれ」クランのリーダーであるシドは冷酷にそう言った。モンスター討伐が終わった直後にシドは俺にそう告げてきた。
俺がこのクランに入って一年くらい経っていた。俺はこのクランに十二分に貢献してきた……はずだった。だが、その頑張りはまるでシドたちには伝わっていなかったようだ。
シドの腰巾着であるカシムが俺の様子を見てニヤニヤ笑っている。
だから言っただろ? こうなるって。とでも言いたげだ。俺はシドを睨んだ。そして言う。
「クビってどういうことだよ。シド」俺は聞いた。「はぁ? そんなことも分かんねぇのか」シドが言う。
「大学出と言っても大したことないな。仲間のお荷物になってんだよ! 何度も自分から辞めるように仕向けたんだがな。ほんっとに空気が読めない奴だな」
「そんな空気なんてとっくに読んでたよ。でもそれに従わなかっただけだろ?」俺は言った。
「はぁ? 何いってんだ。お前が馬鹿だからこんなふうに直接言ってるんだろ! 大体お前のユニークスキル一体なんなんだよ。古い武器と会話出来るって。どこに使い道があるんだよ」シドは言った。
「もうコイツに何言っても無駄だよ。シド」魔法使いのエリザベスがシドにそう言う。
「自分は悪くないーー! って思い込んじゃってるんだから。頭悪いんだからこいつ。もう顔を見たくない」エリザベスは俺の方をチラチラ見ながら言う。
「ま、お前も色々思うことがあると思うけど、お前以外で話し合って決めたんだ……新しい人を入れようって。まぁムカつくと思うが勘弁してくれよ」シドの子分であるサムソンが俺の肩を軽く叩いた。
「え? 違うよ。私は反対したじゃん! サンソン! 私クロードを認めてあげようって言ったよ」ユイはそう言った。サムソンは「え? そうだっけ?」と言って笑う。
「ま、とにかく」シドは続けた。
「これ以上お前と旅は続けられない」
「じゃあシド。今月分の給与はちゃんと出るんだよな。あとさっきのクエストの報酬もまだだが」俺は聞いた。シドは顎に手を当てて考えている。
「あぁ冒険者ギルドに行けばもらえるハズだ。俺が受付に言っといてやるよ」
「そうか分かった……」俺はシドから目をそらした。
「逆恨みするなよ? お前が悪いんだぞ。クロード」そう言ってシドは俺の肩をポンとた叩いた。
「みんなに最後の挨拶はあるか?」シドは言った。俺はみんなを見回す。
クランのリーダーである盗賊兼剣士のシド。炎の女魔術師であるエリザベス。貴重なヒーラーである、教会でシスターとして働いていたユイ。弓矢使いの憎たらしいカシム。そして盾役のタンクのサムソン。
正直に言う。俺はこのメンバーが大嫌いだった。シドはどうしょうもないクズだった。シドの文句を語りだすと俺の人生が何回あっても時間が足りない。それくらい俺はシドにムカついていた。
ユイ以外。ユイだけが俺に優しくしてくれた。だから俺は。こいつらになんて挨拶をすればいい?……俺は少し思い悩んだ。
立つ鳥跡を濁さず。それとも、後は野となれ山となれ。普通にお世話になりました、と言うべきか、最後に嫌味をぶちまけて去るべきか……
俺は……
「みなさん本当にありがとうございました。忘れられない思い出をありがとうございます。特にみなさんが僕にしてくれた酷いイジメの数々は絶対に忘れません。みなさんは末永く不幸せになってください」
俺は両方言うことにした。俺はお辞儀をしながらシドを見上げる。シドはワナワナと震えていた。みんな凍りついたような表情をしている。
「あ、ユイは別だよ。ユイは頑張ってね」俺はユイに言うとユイは硬い表情でコクコクとうなずく。
「俺が居なくなったら誰がイジメのターゲットになるんだろうな。サムソン、エリザベスがお前の悪口言ってたから気をつけろよ。脇が臭いってな」俺はサムソンに向かって言った。
「えっ? 臭い? エリザベスが?」サムソンは青ざめた顔でエリザベスを見た。
「あとシドお前浮気も大概にしろよ。エリザベスに飽きたからって、酒場の女の子と隠れてデートするって、それエリザベスが一番悲しむやつだろ! ちゃんとしろよシド」
シドがえっ? っといった表情をする。その表情を見てエリザベスがシドを睨んだ。
「カシムもクランの金をちょろまかすのやめた方がいいぞ。バレたら大変だからな」カシムがコクコクとうなずく。シドがカシムを睨んだ。
「エリザベスお前。俺をなんども誘惑してきたよな。ハッキリ言って気持ち悪かったぞ。いい加減お前の魅力はモテない奴限定だって気づけ」
「はぁ?! 嘘つくな!」エリザベスが叫んだ。「シド。嘘だからね。こいつの言ってること。全部嘘!」エリザベスはシドに媚びるように言う。シドは白けた目でエリザベスを見ている。
「あ! そうか! ごめん!」と言って俺は頭を下げながら両手を合わせて謝罪した。
「言わない約束だったね。俺にフラれてカシムと関係持ったの。寂しいもんな仕方ないよ」俺は更に煽った。シドがえっと言った表情でカシムを見る。
「違うって! エリザベスが迫ってきたんだよ! 俺は悪くないって」カシムは言った。そしてカシムは「あっ!」っと言って口を抑えた。
「お前!」シドはカシムの胸ぐらを掴む。
ユイはエリザベスと俺の方をチラチラ見ていた。
「じゃあクランのみなさん。お疲れ様でした。さようならーー」俺はそう言ってプイッとメンバーから離れる。後ろからシドとエリザベスが争う声が聞こえる。それを聞いて俺はニヤリとする。
俺は空を見上げた。澄み渡る青空。白い雲が美しかった。また勝ってしまった。俺はそう思った。ささやかな復讐を果たした俺は心に一抹の虚しさを感じながら思った。
この世界は美しいと。俺は今まで空を見上げてなかったことに気づいた。この世界は美しいままで常に俺のそばに存在していた。
人々の醜い人間関係の中にいると忘れがちになる。世界は残酷なんかじゃない。本当に残酷なのは人間の方だ。
「クロード!」後ろから声がかかった。ビクッとして俺は振り返る。ユイだった。
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