第18話 グループwire・ミーディング 森寿賀 敬
コウ『昨日サーバーにあげておいた音源と歌詞、もうチェックしてくれたか?』
グループwireにコウからのメッセージが来た。もちろん、チェック済みだ。いつの間にか、あの曲には「Milky Way」というタイトルがつけられ、歌詞もアレンジも完成していた。
ところで、なんで今回は俺に語り部がまわってきたんだろう? ストリーが語り部役を引退したって噂を聞いたけれど、一体、彼に何があったのだろうか? 今は中間考査期間中、影響しなければいいんだけれど……
そんなストリーからスタンプがきた。
ストリー『………』
え? スタンプも3点リーダーなんだ。そのスタンプをタップしたら、ストリースタンプと書かれたページに飛んだ。40個のスタンプが並んでいて、そのどれもが「………」という吹き出しになっている。制作者の名前はストリーKGとなっていた。ストリー、精神が病んでしまったのだろうか? 何か、心を抉られるようなことがあったのだろうか? そもそも、50wireコインでこんなスタンプを買う人がいるとは思えないのだが?
良一『結局あの歌詞って誰が書いたの? 弟の
コウ『母の友人が作ってくれたんだ』
良一『それっておばさんが書いたってこと?』
失礼なやつだな。コウの母親の友人なら、確かに年齢としてはそうだろうが、言葉を選べよ。だから弟から嫌われるんだ。
コウ『そうだけど、別に内容はおばさん臭くなかったろ? 文才あるよ。いい詞が出来たと思ってる』
タカシ『詞、よかったよ。曲をさらにいい方向に引っ張っていってると思う』
俺も返信した。寡黙キャラであるストリーよりも、なんだかんだで俺の方が台詞少ない気がするからがんばらなくちゃ。
コウ『でな。曲の構成と詞はこれで一先ずフィックスだ。細かいアレンジについてはリハーサルで変わっていくかも知れないけどね。試験明けのリハを楽しみにしてる』
タカシ『その試験が大変なんだけれどねー』
ストリー『………』
良一『………』
同じ3点リーダーでもストリーと良一は明らかに意味が違って読めるのが不思議だ。あと、ストリーのスタンプはさっきと違うやつだ。すげー、使い分けてる。
タカシ『コウとストリーは勉強進んでるか?』
コウ『んー、得意科目はやらなくても出来るし、そうじゃないのは興味が無くてイマイチやる気が起きない』
ストリー『たまに姉貴たちに邪魔されるが、勉強とギターが清涼剤になってる』
良一『何で勉強が清涼剤になるんだよ。わけわかんねー』
コウは相変わらずのマイペースのようだ。それでA組に入れるんだから大したもんだ。ストリーのことは、やっぱり心配だな。試験が終わってバンド活動が再開すれば、少しは復活するのだろうか? 良一先輩は自分には尋ねられなかったことに何の違和感ももたなかったようだ。
妹の智流からもメッセージが来た。勉強を邪魔しないよう、直接部屋には来ず、wireを使ったようだ。
タカシ『わかった。今から行くよ』
良一『ん? どこに行くんだ?』
しまった。バンドのグループwireの方に返信してしまった。誤爆だ。
タカシ『ごめ。誤爆。妹を食べようって』
良一『何だと!!』
重ねて大失態。誤字の上、途中で送信してしまった。
タカシ『間違った。妹に、おかしを食べようって言われたから、今から行くって返信しようとして、誤爆してしまったんだ』
良一『言い訳がましい!』
コウ『シスタカシ。だから性癖は隠せと言ったろう。あまり風紀を乱さないでくれ。良一がどんどんポンコツ化するんだから』
タカシ『シスタカシ言うなー!』
ストリー『俺も今、姉貴たちからおやつに誘われた。怖いから未読スルーしてる』
ストリーのお姉さんたちって一体どういう人なんだろう? 女子大学生って話だから全く興味はないけど。
良一『お前ら、なんで兄弟仲がそんなにいーんだよ。俺なんか弟からwireブロックされてるんだぞ!』
コウ『いいからお前は勉強しながらドラム叩いてろ!』
コウは容赦ないなー。
コウ『それから、2曲目「
**********
「やっと降りてきたー。もう、遅いよー」
居間に入るなり、智流が腕にぶら下がってくる。引き摺られるようにしながら、そのままソファに座った。えっと、腕、離さない? 片手が塞がったままなんだけど。
「紅茶、ちょっと冷めちゃったんじゃないかな? いれなおそっか?」
「いや、いいよ、これで」
「ねぇねぇ。キノコ山ゲームしよっ」
「ん? 新しいゲームでも買ったのか? いいよ。どんなゲーム?」
「ポッキゲームは知ってるでしょ?」
「ああ、ポッキを両側から食べていくやつね」
「そうそう。ルールはポッキゲームと同じだよ。ポッキじゃなくてキノコ山でやるの」
おいおい。それはダメだろう。
あれはポッキだから成立するゲームだぞ?
キノコ山でそれをやったら、チョコ側が有利すぎないか?
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