第46話 秩父 清雲寺の枝垂れ桜その二

46秩父 清雲寺の枝垂れ桜


 平成二十一年四月三日



夕方になったので清雲寺に向かう。


そろそろ空いてきただろう。


最近、清雲寺はバスツワーなどの観光客が多くて


絵を描きたい気分にさせてくれない。


そのために夕方を待つのである。


清雲寺は境内いっぱいに桜、桜、桜である。


新しく植えたピンク色の枝垂れ桜がこの間訪ねてきた時よりも


大きく育って自己主張をし始めている。


本来の枝垂れ桜が小さくなって居心地が悪そうである。


花は終わり気味で葉が出始めている。


これからは新しい方の樹が満開になる。


何となく公園化してしまったことに少し不満といおうか複雑な気分である。


ピンク、ピンク、ピンクの枝垂れ桜は目の保養には良いのだが風情がない。


何百年が経っている樹は一本できりっと立っている。


その方が良いと思うのは私だけだろうか。


いつもの樹をスケッチしてから何となく立ち去りがたくて花を眺めている。


夕闇が迫ってきて寒くなってきたというのに見物客が多い。


まだ来る人も居る。


帰り際、もう一度振り返ると、丁度夕日が山に沈む所であった。


すると待っていたように、いや待っていたのだろうがアマチュアカメラマンが


ぞろぞろと出てきてカメラを構えだした。


何でもしだれ桜の古木の樹の穴のところに夕陽が差し込むのだとか。



   



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る