第29話 市川 弘法寺の伏姫桜
29 市川 弘法寺の伏姫桜
八街の長光寺のスケッチを終えて駅に戻り総武本線で帰路につくが
市川にある伏姫桜というのが気になっていた。
夕方に近いがいつ見に来られるかわからないので行くだけ
行ってみようと思い途中下車する。
例の大きな紙もまだ残っているし・・・
駅から歩いて行ける距離がいい。
参道の石段を登ってゆくと大きな椎の木がある。
何となく磯の香りを感じた。
子供の頃の記憶にある臭いだ。
昔は海岸が近かったのだろうか。
まったくの気のせいか。
その階段を登りきると広い境内に出る。
出店が出ているので何が売っているのか見てみる。
枝垂れ桜は右の奥に見えているのだがすぐに桜を見に行かないで
少し心を落ち着かせてからとグズグズと時間を稼いでいる。
そして桜の樹の所へ歩いてゆく。
桜の樹は地面から二本の幹が出ていたようだが一本は折れたのか
途中から伐られている。
四百年の歳月を生きて来たのだから仕方のないことかと思う。
残りの一本は大きく傾いていて支柱で支えられている。
まるで龍がノタウッテいるようにみえる。
特に上に伸びた枝が途中で伐られている。
それが頭に見える。
枝垂れ桜の樹は「伏姫桜」という名が付いていた。
どういう意味なのだろうか。
一説によると南総里見八犬伝に出てくる登場人物の伏姫からとったらしい。
姫?には見えないが名が付いた時はもう一本の幹も健在だったのかも
しれない。
さて、その傾いている伏姫桜の優雅な姿を観察する。
大きめの花びらが咲いている。
ぐるりと三回ほどゆっくり回ってスケッチする場所を探す。
傾きの頭の部分は正面から描くと大きさや傾きが表現できない。
やはり、傾いた幹を描いた方がわかりやすいだろう。
という訳で一枚スケッチする。
境内には他に染井吉野が沢山あるが今の私は興味ない。
サッと眺めて目の保養だけですます。
スケッチが終わってからも伏姫桜の周りを二回ほどゆっくり巡り
後ろ髪引かれながら帰路につく。
今日は四本の樹を大きな紙に五枚スケッチして
大大大満足!
後は家に戻ってから牛が反芻するように
一枚ずつのスケッチと目に焼きつけた記憶の映像を
思い出しながら眠りに着く。
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