第17話小川町 西光寺の枝垂れ桜

 17 小川町 西光寺の枝垂れ桜


春に桜を見に行った時にモミジの樹を見つけ、秋の楽しみとなったり


傍に大きな藤の弦を見つけ、五月になるのを楽しみにしたりと。


次の休みの日に出かけた小川町の西光寺がそうだった。


「道の駅小川町」には小川和紙を買いによく出かける。


埼玉伝統工芸館が隣接している。


一度布絵の展示会をしたこともあった。


ある時、駐車場へ車を入れて川の方に愛犬を連れて散歩に出た時の事である。


遠目にもその先に寺があるのがわかっていたのでご利益があるかもしれないと思い


寄ってみることにした。


鐘楼の門をくぐってすぐ右手、本堂側に枝垂れ桜らしき樹があるのを見つけた私は


見に来るべき時期を知るためにそばを通りかかった近所の人に花の時期を尋ねた。


どうやら早咲きであるらしい。


ついでに山の方に足を向けるとカタクリの咲く斜面らしく、小さな看板があった。


見落としそうなほどの小さな木片であったが。


カタクリと枝垂れ桜の両方を楽しめるのかもしれないと気が付いた私は内心、喜んだ。


思わぬところに花の名所を見つけたものだ。


たまには違う道も歩いてみるものだ。


そして、今日十四年三月二十四日に出かけて来たのであった。


充分に早咲きの桜に対応できる日にちである筈であった。


だが、目的の枝垂れ桜はもう終わりでのようだ。


今年は、桜の開花が早いので計算もくるってしまう。


残念ではあるがどうにもできない事である。


枝垂れ桜のスケッチは後回しにして林の中のカタクリの描きに行く。


カタクリの花は午後には花を閉じてしまうにでそちらを優先したのである。


カタクリのスケッチを終えてからため池のようなところを通って本堂のの方へ土手の上を歩く。


染井吉野の樹も満開でその花びらがため池の水面を彩ってなんとも言えない味を出している。


染井吉野の樹は古株なのか結構大きくて立派であり花も美しい。


でも、やはり枝垂れの方を描きたい。


花は終わってしまっていても枝垂れは枝垂れなのである。


せっかく来たのだから。


細いながらもグイグイと上に伸びている幹。


カーテンのように垂れ下がる枝・・・花は散るというよりシワクチャになって


枝に引っ付いているという風である。


凛々しい青年がすっと立っているという風情であった。






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