第15話 石戸の蒲桜

15 石戸の蒲桜 平成十三年四月一日



 四月に入ってすぐの休み、どこへ行こうかと考え


石戸の蒲桜でも見に行こうかと車を走らせる。


石戸の蒲桜は日本五大桜の一つらしい。


五大桜を確認すると、三春の滝桜、山高の神代桜、静岡の狩宿の下馬桜


、根尾の薄墨桜、そしてここ石戸の蒲桜である。


こんなに桜・命の私なのにこの中の一つもこの目で見ていない。


もちろん、見たいという願望はある。


でも、何故かどこにも行っていない。


これも私の七不思議の一つである。


石戸の蒲桜を見に来るのは二回目である。


以前は花が終わっていたので、今回は少し早めに来たのであったがやはり振られた。


周りを囲むように立っている染井吉野は満開であるが蒲桜は二分咲きぐらいである。


正確に言うとこの蒲桜は一本ではない。


古い幹がほんのわずか残っていて、セメントのようなものを塗られている。


そして、花を咲かせているのはその根元から生えているひこばえである。


根元に何かの碑なのか墓石のようなものを抱き込んで親株から見れば細い枝を


根元から地上に向かって大手を広げているように見える。


こういう形の樹も珍しいのかもしれない。


まるで幹が土の中に埋まっているようだ。


本体の蒲桜に遠慮してかまっすぐ幹を太らせないで斜めに倒れ込んでいる。


親の樹を包み込んでいるようにも見られる。でも、二分咲きでは仕方ない。


改めてもう一度来るとしよう。


その時はこの樹の形が変わっているかもしれない。


楽しみがまた増えた。





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