第6話 大平山下 太山寺岩枝垂れその二
大平山 太山寺の岩枝垂れ その二
平成十二年の四月二日、今度こそはと再チャレンジすることにしてボロ車を走らせて
太山寺の枝垂れをスケッチしにやってきた。
さて、私の恋人、大山時の枝垂れ桜は機嫌のよい姿を見せてくれるだろうか。
私の住む埼玉県は二、三部咲きである。
来週に回すと満開を過ぎているかもしれない。
期待に胸膨らませて出かけて来たのにまたまたがっかりする事となる。
今度は咲いていない。
固いつぼみがばねのような枝に引っ付いている。
前に来た時に目にしたようなしなやかな枝に残り香のように白い花びらが付いていた
桜の樹と同一とは思えない。
かたくなで意固地にさえ思えるほど けして開くまいと決心しているかのような蕾。
そしてそれを助ける若い恋人のような強靭な枝。
わざわざ遠くから訪ねて来た私を拒否しているかのようなよそよそしい態度。
またおいでと冷たく突き放している。
私に心を開いてその華麗な姿を見せてくれるまで通いつめなくてはいけないらしい。
大山寺はこの年、本堂を建て直すのか枝垂れ桜の向こうにあるべき建物が無かった。
逆側から見るのに絶好のチャンスであった。
本堂があったら描くことのできなかった姿を私はスケッチブックに書き留める事が出来た。
これだけでも来たかいはあったというものである。
滅多にみられない本堂のあった場所のその真ん中からの姿を
心行くまで楽しむ事が出来て幸せであった。
さて、今度いつ見に来られるだろうか。
その時こそ美しい姿を見せてくれるだろうか。
楽しみが一つ増えた。
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