校則戦記

<イタズラ兄妹またも活躍>

 ×月〇日、例の兄妹がまたやってくれた。坊主頭の男子学生の地肌に根を張る「アフロ草」を開発、学内中にまき散らすという度肝を抜くようなイタズラにより、校内のすべての男子の髪が緑化。

 一度根を張った草は、地毛との生存競争に負け、自然に枯れるまで消えないとのことで、校長は特例的に、男子学生の坊主規則撤廃を決定――


<イタズラ妹、実はアンチスカート?>

 またも例の兄妹がやらかした。女学生のスカートの長さを示すロゴマークに掛けられたスカートめくりの呪いは、今度は妹作だという。開ききったチューリップのごとくそり返るスカートは切るか伸ばすかしかなく、指導教員は一時的に女学生のズボン着用を承認――


<レインボーヘア ハロウィンの新定番となるか>

 髪色は今や気分によって変わるのが普通だ。

 学内の色を反転させる大掛かりな魔法は、もちろん例の兄妹製である。赤髪は緑に、黒髪は白髪に。カーキで統一されていた校内は、今や深い紫色だ。二週間後のハロウィンパーティーにむけて、わたしたちは青いカボチャを探さなくてはならない。


<白い体操着廃止 きっかけはやっぱりあいつら>

 配布された濃紺の体操着は、やっぱりクソダサいけれど、白よりはましだろう。下着の色は透けないし、なにより、校内中に放たれた「カラーボール蜘蛛」が、きみの真っ白なキャンパスを狙っているのだから。

「この蜘蛛の育成には半年かかったんだ」と誇らしげに語るのはやっぱり例の兄の方で――


 何読んでるの、とのぞきこまれて、僕は黄ばんだ学内新聞をそっと持ち上げる。

 妹はさっと目を走らせて、それから懐かしいわねと笑った。

「まさか、あの問題児だった僕らが教員になるなんて、誰も思ってなかっただろうなあ」

「そんなことないわよ」

 妹はふふふと笑い、杖を振った。カーテンの開いた先の中庭で、ズボン姿の女子が、長髪を括った男子と飛行レースを繰り広げている。

「私たちが度肝を抜くことなんて、みんなもう慣れっこだったじゃない」

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