【2分小説】つまみ小説3

配慮なんかいらん

　俺が甲子園を興した理由っすか？　それはやっぱり、あいつがいたからじゃないっすかね。

　だって、おかしいでしょ。新人類ってだけで参加できないとか。

　いや、そりゃもちろん知ってますよ。体格も、筋力も、人間の性能だって段違いなのは、同じ野球やってる俺たちが一番よく分かってます。けど、それって、俺たち旧人類が負けていい言い訳にはならないっすよね。

　というか、そもそもそういう「配慮」ってのがもう、ムカつきません？

　はい、あいつが野球辞めずにいてくれてよかったです。新人類は甲子園に出られないからって、中学で辞めちゃうやつも多いみたいだから。

　前から？

　そうですね、あいつは目立つので知っていましたよ。草野球レベルで試合もしたことあります。

　はい。ぼろ負けでした。絶対言いたくないけど……これが強化人間かって思い知りましたよ。ちょっとでかいだけだと思ってたんですけどね。さすが、戦闘兵として作られたってだけある。……え？　今の差別用語ですか？　そうなんだ。先祖が戦争を終結させたスーパーヒーローなんて、俺だったら自慢して回るけどな……。ああ、はい。カットしておいてください。すんません。

　なんでしたっけ。ああ、そうだ。無差別甲子園を作ったことについて、ですよね。高校行って、絶望したんです。あいつと甲子園で戦えないってこと知って。だから、自分で作りました。

　そりゃあ、いろいろ考えましたよ。なんとかあいつを旧人類ってことにできないか、とか、大会の運営に規則を変えてもらえないか、とか。

　けど、あいつは旧人類にしちゃあデカすぎたし、大会の運営は頭が固くて、検討すらしてもらえなかったし、じゃあもう、作っちゃえってなったわけです。

　実際、こんな少子化の時代に、さらに旧人類限定とか、それだけで参加できない学校も多かったみたいで、いろんな人が協力してくれて、とんとん拍子で進みましたね。俺、難しい事はわかんねえから、すごく助かりました。明日から始まる大会ができるの、皆さんのおかげっす。

　……え？　あいつが俺に？　いやいや、ないっすよ。感謝とか。確かに野球続けてるし、大会もエントリーしてましたね。

　けど俺、あいつと友達じゃないっすもん。

　え？　いやホントだって。ラインも知らないし。じゃあなんで、ってそりゃもちろん、あいつをぶちのめしたかったからですって。

　友情？

　あはは、ないない。俺、あいつにずっと負け越してるんです。だから、どうせ倒すなら、最高の舞台で叩きのめしたいじゃないっすか。