短編

おやすみ

「おやすみ」

友人は目を覚ました自分に確実にそう言った

その時は瓶をそれこそ馬鹿みたいにあけてフラッフラになって気持ち悪くなってからの気絶だったから何を言ってるのか分からなくてもっかいそのまま寝た

目も開けてないのにぐにゃりと黒が廻ってて当たりが吐瀉物臭かったのを覚えてる

誰かからの連絡で見舞ってくれたのか、ゴミだめの中でもがいてる自分を嗤いにきたのか

まあいいやなんでもいい、俺は寝たいんだ

眠たくて興奮してて気持ち悪い、ダメな酔い方してることは分かる

しゃーないやん、寝れないんやし

俺悪くなくない？

むしろなんでお前が来んの

どんな目で俺を見てんの

こんな俺見てて、さぞかし気持ちいい気分だろうな

這いつくばってゴキブリみてぇな俺を

あー寝れない、今にも落ちそうなぐらい眠いのに全く寝付けない

目を開けたら明かりが眩しくて頭痛がするし、きっとまだ夜中だ

夜ならまだ今日だから、今日のうちに寝てしまわないと

クッソ吐きそうマジで、なんでこんな惨めな目になんなきゃいけないんだよ、ほっといてくれよ

難関国公立理系推薦入学、成績優秀、文武両道、眉目秀麗

上げたらキリが無い、言えば言うほど虚しくなる

こちとら中堅国公立を落とし、私立もコケてまあ受けるけど行かないよね見たいなノリの私立大学でなんもならない何処にでもいる一人

大量に人が来る大学故に未来も無い、技術もない

浴びるみたいに酒をやる以外に脳がない

こんなん見てたらそりゃ楽しいよなぁ？

こんなクソカス野郎見てたら誰でも自己肯定感高まるよな、分かるわ俺もそう思う

クソッタレが

ぽたぽたと意識がぶつ切りで嘔吐く度に意識が戻る

最悪だ

自分がしたことだとはいえぶつける当てもない苛立ちが募る

胃がグラグラと揺れて、ぶん回されてるみたいに脳が揺れる

ぐにゅぐにゅと体が潰されるみたいに不快感が暴れて、手にあたる全てに八つ当たった

死んじまえ

「おはよう」

疲れ果てて落ちる寸前やっぱり確かに彼はそう俺に言った