唐突な借金です

 翌日、再び特訓。成功率は8割ほどまでに上がった。

 昼食を済ませ、再び……と思ったら、

「とりあえず現状報告にいこう」

 と、マルシーン。

 確かに、ある程度の連絡はしておくべきであろう。塔の中に入り、受付にいるミコトさんに声をかけた。

「あ、その後どうです?」

 僕たちは現状を説明した。

「ふむ……」

 ミコトさんが考え込む。

「それならば、実践訓練を始めてもよろしいかと思います」

 え、まじでか。2割は暴発するんだが……。大丈夫なのか?

「マルシーンさん、彼の魔法が暴発しそうなときって分かりますよね?」

「え? ああ、分かるよ」

「それなら、月の塔指名の依頼が届いていますので、こちらを手掛けてみましょう」

 にっこり、と微笑むミコトさん。なんだか……圧を感じるのは僕だけだろうか。

「へぁあああ!? それ、僕が同行するって話かい?」

 マルシーンがどこか慌てた様子で言った。

「もちろんですが、なにか?」

「冒険者は引退したんだけど……」

「『月の塔への依頼』ですからね」

 ふたたび微笑むミコトさん。絶対圧があるな、これは。

「それに……」

 と今度は僕に目を向ける。

「マモルさんがやらかしてくださった、色々の件。一応こちらで立て替えておきましたが……」

 なんだか…嫌な予感。

「マモルさんからは150万G、お支払い頂くことになりました、うふ」

 うふ、じゃない。

 「やらかしていた」らしいのは知っているが、それは僕じゃないんだ、多分。

 若干の心当たりは無きにしもあらず。しかし、あくまで「ゲーム」としてのそれだ。


 僕のこの世界での冒険は、借金から始まってしまうの……か?

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