がんばってるです。

 何度同じことを繰り返したのか。いつの間にか辺りは暗くなっていた。

「おーい、どうだった?」

 マルシーンが戻ってきた。

「全くうまくいかないんだが」


 元の世界では、ゲームをやり込んで魔力もマックス。 大魔法を放ってモンスターの群れを一塵するのが快感だった。こんな細かい作業を今になってやることになるとは。

「ま、そのうちなんとかなるよ」

 そう慰められる僕。

 「最強プレイヤー」と言われていたあの頃が懐かしい。

 そういや僕も、ビギナープレイヤーに対して同じことを言っていたっけ。


 昨夜泊まった宿舎は一日限りとのことで、マルシーンが定宿としている宿に向かうことにした。

 そこはどうやらツケが効くらしい。ツケというからには後々返さねばならないのだが。


 マルシーンは以前は冒険者をやっていたらしい。かなりの実力者だったようで、そこそこの稼ぎがあったようだ。宿もその頃から使っていたところだとのこと。


 一階部分は酒場になっており、夕食をとることにした。

 店員からメニューを受け取って眺める。

「ん?」

 あることに気がついた。メニューの文字が日本語だ。そう言えば、この世界にきてから言葉には困っていない。

「どうした?」

 マルシーンに問われて、そのことを伝える。

「ふむ」

 彼は少し考え込んで言った。

 マルシーンによると、彼には僕の言葉は普通に聞こえ、文字なども特に違和感は無いらしい。

「日本語化パッチかなぁ」

 僕は思わずメタ的な事を言った。

 この「パドマル」は元々は外国のゲームで、日本でのサービス開始にあたって翻訳などが行われていたのだ。

「へ?」

 マルシーンはきょんとしている。

「あ、いや、なんでもない」


-随分不愉快な話だね


 彼はこの世界が3年前にできたのかもしれないことについて、そう言った。それを思い出した僕は、それ以上のことを伝えるのがはばかられたのだ。

 そして就寝。


 夢の中で、僕は元の世界で朝食をとっていた。

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