世界樹転生─異世界支配とビキニアーマー開発─
藤井ことなり
第1部 カーキ=ツバタ王国編
01章 カーキ=ツバタ王国へ
──抜けるような青い空だった。
クジラみたいな雲が群れをなして流れていく、ここから見ると海みたいだな。おそらく向こうから見れば、こちらは草原の海に緑の島のように見えるだろう。
その緑の島、いや森の中にある小さな湖で
「いや~、まさかこんな森の中でこんな美人さんに会えるなんてねぇ、しかもふたりも」
そのふたりの間にいる平凡な男のオレは目に映らないらしい。まあ気持ちはわかる。
「あんたらなら都で流行っているビキニアーマーが似合うだろうなぁ」
「「びきにあーまー?」」
オレの左隣にいる
「知らないのかい、あんなに流行っているのに」
商人はふたりが知らないのを驚き、オレも別の意味で知らないのに驚いた。その様子を見たハイドライアドがオレに尋ねた。
「ねぇクッキーは知っているの、そのびきにあーまーって」
「いやまあ」
オレはどう答えようか迷っていると、商人の仲間が出発の合図を伝えてきたので、挨拶もそこそこに仲間のところに戻っていった。
オレたちが見送って商隊が見えなくなるとすぐ、ハイドライアドのアディが、ふたたび尋ねてきた。失礼だと知ってはいるが質問で返す。本当に知らないのかと。
「知らないわよ、アーマーは知っているけどビキニなんて聞いたことないもの」
「私もだな。アーマーというからには鎧の類いだとは思うが、ビキニの意味がわからない」
エルフのユーリも知らなかった。
クッキーと呼ばれてるオレは、もともと日本の会社員だったが、流行り(?)の異世界転生とやらで、こっちの世界に樹木として転生した。
そのあと200年ほどなんやかんやあって、今は世界樹を素材とした
ふたりの言葉で何となく理解した。ビキニアーマーは元の世界の創造物で、こちらには無いものなんだ。なぜならビキニはたぶんこちらには無いからだ。
「アディ、ユーリ、この世界では海水浴とか水遊びとかしないのか」
「海水浴とやらは知らないが、川や湖で水遊びはするな」
ユーリが答える。
「どんな格好で」
ユーリはアディに頼み、近くに生えてる蔓を掴むと念を込めて形作る。蔓を操れるのは樹木精霊らしいが、造形のセンスはいまいちな出来で、露出の少ないパジャマのような形をつくる。
「男も女もこれだ。それがどうした」
オレも蔓を掴むと念を込めた。そしてナイスバディの女体を型どり、葉っぱでハイレグビキニを再現した。
「うわっ」
「きゃあ、なんなのこのイヤらしいのは。下着よりも布地が少ないじゃないの」
ユーリが顔をしかめ、アディが葉っぱを増やしてワンピースに変えてしまう。
やはりふたりともビキニそのものを知らなかったか。
ビキニアーマーとは、元の世界での創造物で女性用の胸部と腰部に付ける鎧防具だと説明すると、ふたりは首を傾げる。
「そんなところだけ守る防具なんてなんの意味があるのよ、全身守ってこそ鎧でしょうが」
アディの理不尽な怒りを受けながら、ユーリに助けを求めると、
「私も納得いかんな。たしかに動きやすいのと胸を守るというのは認めるが、腰のところが理解出来ない」
長寿族のエルフゆえにユーリは思慮深い。それに、森の中を縦横無尽に動き回り獲物を狩るという生活をしているので、実用重視な考えをする。
実用品でなく装飾品だと説明すると、ようやく納得してくれた。
「ねえ、それ見に行かない?」
好奇心の強いアディが提案してきた。
※ ※ ※ ※ ※
オレたちがいるこの[世界樹の森]通称マイワールドは、世界樹候補であるオレを中心に形成されていて、次期世界樹候補として森の拡大と形成を目指している。
今のところ問題なく規模を拡大しているが、いずれ他種族と接触することになるだろう。
となると生物とのコミュニケーションをとれる躯体を手に入れた今、練習をかねて都に行くのも悪くない提案だった。
ユーリもそろそろ仕入れたい物があるからつきあうという。
商人が言ってた都は、東に歩いて3日かかるところにある。それぞれ準備が出来た10日後にオレたちは都に向かって旅に出た。
※ ※ ※ ※ ※
道中はなかなか刺激的だった。なにしろ森から出たことがない。
ずっと森を形成することによって支配地を増やすことばかりで、文明社会のことなんて興味なかったからだ。
ユーリは旅慣れているので、ほとんど任せっきりだ。
夜明けとともに歩きだし、日中は歩きづめ。
日が暮れるとともに夜営の準備をし、野生動物に警戒しながら寝る。
「クッキーとアディがいるから安心だな」
そして森を出てから3日後の朝、オレたちは都の城壁前の検問の列に並んでいた。
一応説明すると、3人とも人らしい格好をしている。
精霊であるアディは
その躯体にこれまた森の植物で糸にして織った布で作られた旅人らしい服を着ている。オレも同様な感じだ。
ユーリはもともと肉体があるし、ヒト族以外の種族にも偏見を持たない世界らしいから大丈夫だろう。服装はいつも通りフード付マントに狩人らしい装備の格好だ。
「なにい、保証金がないだと、それなら中に入れる事は出来んな。帰れ帰れ」
「ちょっと何よ保証金て、あたし達は怪しい者じゃないわよ」
「どこの田舎者だ、保証金も知らないとは。そんな者を街に入れたらもめ事が起きるだろうが」
外見と違う事で揉める事になった。国民でないものは、保証金もしくは保証人がいるそうだ。カネが必要なのはどこも一緒らしい。
強気なアディが門番と揉めていると、後ろから声をかける者がいた。
「失礼、そちらの3人の補償金、私が出しましょう。それで収めてくれませんか」
小肥りの中年のいかにも旅商人という風体の男が首に下げてた
オレが旅商人に礼を言うと、ユーリが冷たく言う。
「礼なぞ言わなくていい、そいつは旅商人らしいから必ず下心があるはずだからな」
旅商人はピシャリとおでこを叩きながら笑う。
「話が早い。私はこの国に住んでいる旅商人のモーリといいます。あなた方は? 」
「旅の者だ。ここには見物に来た」
「見物?」
「あたし達、ビキニアーマーを見に来たの」
アディの言葉にモーリは目を丸くした。
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