第36話 リアンの過去



その日はいつものようにメリスと買い出しに行くといっていた日で、この日はなぜかティアさんが私に対して外に出ることにすごいこだわっていた。



「まだここに来てから一度も外に出たことがないじゃないか。おいしいパン屋があるんだ。メリスもいるから一緒に行かないかい?」

「今日も眠いので行きたくないんです。」

「日の光を浴びないから。カーテンもいつも閉めたままじゃ、体が起きないだろうさ。」



なんで今日はそんな頑なに外に出したがるの?

いつもだったら“そうかい”で終わるじゃん。

そもそも、外に出て発作が起こったらどうするのさ。2人にも私の奇病名伝えてないし、対応できないじゃん。



「じゃあなんで外に出たくないのか、理由を教えてくれないかい?」

「…。」

「んー、そうだねー、当ててみよう。人込みが苦手?」

「違います。」

「太陽が苦手?」

「違います。」



人は好きだし、太陽とういうか外に出る事は大好き。

大好きなんだけど…今は怖い。

でもこれをティアさんに言うかどうかって言われたら言いずらい。



「じゃあ…、リアンは何に怯えているんだい?」

「!?」

「なんとなく察してはいたんだけどね。こういうことは言ってくれないとわからないし、1人で抱えないでほしい。私はいつでも力になるから。」

「力に…?」

「あぁ。」

「無理だよ…。わ、私の気持ちなんて、絶対に他の人は分からないんだ!!!」

「ちょ、リアン!?押さないでっ―」



バタンッ



はぁー、やっちゃった…

でも私の気持ちは他の人になんてわからない。

言わなきゃっていうけど、それでも理解してもらえるとは思えない。


親から向けられる冷たい視線とか、家族が自分のせいでバラバラになっていくことを間近で見てるんだもん。

私は、家族に…いや、親にあの日捨てられた。








あの日は突然、心臓が握られるような衝動に駆られて、さらには人を殺したいという衝動も沸いたことに私は子どもながらに違和感を覚えた。

運よくすぐに収まったけど、不安になった私はお兄ちゃんに相談した。全部話を聞いてくれたお兄ちゃんはすぐに病院に行こうと言って、念のためお母さんたちには内緒でお姉ちゃんも含め3人で行ったんだっけ。


病院での診断で自分が奇病であるとわかり、病名も恐らく”殺人病”であると言われた。その奇病は人を殺めることもしくは自然に収まることでしか発作を抑えることはできないと説明された。




それからしばらく経ってお母さんとお父さんに奇病がばれたのは、タイミングが悪く家で談話している最中だった。


また突然衝動が襲ってきて、運悪くテーブルの上に果物ナイフがあったからそれを持ったことは覚えてるけど、その後どんな行動をとっていたかまでは覚えてない。でもお母さんとお父さんに言われたことははっきりと覚えてる。


『誰かあの子をとめて!!化け物よ!』『あいつが包丁を持った!おい、お前たち見てないで押さえつけるのを手伝え!!』


そう言われ、泣きながらお兄ちゃんたちに縄で縛られ病院に連れていかれた。



病院から戻り、お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に改めて親に話した時、親から軽蔑の目で見られ、あ母さんからは『あなたみたいな子はもう娘じゃない』と泣きながら言われ、お父さんからも『奇病を発症するのは何かしらお前に問題があるからだろ。つまりは出来損ないだったからだ。』って言われていてもあの時の私には奇病がばれたショックも重なり理解するのに時間がかかった。


お兄ちゃんもお姉ちゃんも発作を目の当たりにしたのもあって怖がってたけど、ずっと自分たちの妹だからと言ってくれた。でもお母さんとお父さんからの心ない言葉のせいで優しいお兄ちゃんとお姉ちゃんの言葉も全部は信じることができなかった。

大好きだった家族からの対応がよそよそしいものに変わってから、家族を信じられなくなってしまった自分が嫌になり、心を閉ざすようになった。そうしたら発作を起こしても一人でいるから、誰もキズつけないでしょ?だから、これからもそうするんだって決めたの。



大丈夫。親に守ってもらわなくても生きていける。

そう覚悟して私はこの町に来たんだ。









んっ…寝ちゃってた。

嫌な夢を見ちゃった。


はぁ、それよりもティアさんに怒鳴っちゃった…。嫌われちゃっただろうな。家を出ていけって言われるかな?怖いな…



コンコン


誰だろう?ティアさんかな?



「はい…?」

「メリスだよ!開けてもいい?」

「うん。」

「おじゃましまーす!」



いつもいきなりだけど今日は何だろう?



「どうしたの?」

「えっとね、リアンさ、ティアさんとケンカした…?」

「な、んで?」

「朝リアンの怒ってる声がちょっと聞こえたのと、ティアさんがずっと元気なかったから。」

「そっか。心配してくれてありがとう。でもケンカっていうほどじゃないと思う。私が勝手に怒っちゃっただけだから。」

「そっか。んー、じゃあさ、ティアさんにごめんなさいした?」

「してない…。」

「そしたら一緒にごめんなさいしに行こ?ね?」



何でメリスはここまでするの…?私とティアさんの問題なんだからほっといてくれたらいいのに。



「一人でいk―」

「ほら、1人だとずっともじもじしちゃうでしょ?2人なら怖くないから!ね?」

「わかったから。行くから、引っ張らないで。」



メリスってこんなに押しが強かったっけ!?

すごい引っ張っていかれるんだけど!?



「ティアさーん!リアンから話があるって!」

「え!?」



話があるって…いや、うん。合ってるけど…。いきなり過ぎない?



「なんだい?」

「えっと…その…」

「ほら、リアン頑張って!」



メリスが手を握ってくれてる。メリスの体温が手から伝わって来て少し安心する。

ティアさんはちゃんと私の事見て待っていてくれてる。



「うん。えっと…、朝いきなり怒ってごめんなさい!」

「謝れて偉いね。少し驚いたけど、私も無理に外に出ようと言ってごめんね。」

「理由を話さなかったから…。」

「そうだね。でもリアンが話したいと思う時に話してくれればいいよ。」

「ありがとうございます。」




優しい人で良かった。2人にならいつか話せるって思う時が来るかな。



-続く-





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