第8話 不安

 「ただいま。」


 「おかえり、メリス。どうしたの?なんか浮かない顔だね。」

 

 「うん。明日から少しずつ独り立ちするんだって。」


 「よかったじゃん!やっと独り立ちできるのに何でそんなに渋い顔してるのさ」



私はさっき店長と話していた内容をリアンに伝えた。

任せてもらえる嬉しさはもちろんあるけど、いずれ店長がいなくなって一人になることがあると感じ取れる言い方をしていて、複雑な気持ちになっていしまったことを。

 


 「店長、いやお母さんはやっぱり自分の死期が近いと思っているのかな?」

 

 「どうだろう。お母さん自身は考えていなさそうな話し方するからわからないんだよね。仕事中もごく普通だし。まだ病気の進行も見える範囲だと手足だけだから。」

 

 「お母さんは昔から隠すのがうまいからなぁ…、お母さんてそういうものなのかな?」

 

 「せめて私たちの前だけでも隠さないでいてほしいんだけどね。」



私たちだけの時は店長の事をお母さんと呼ぶようにしていて、店長本人に言うとお前たちの本当の親ではないからと怒られちゃうから言えない

私たちにとっては店長こそが捨てないでいてくれた唯一のお母さんなんだけどね。


私たちが何も知らずにこの町に連れて来られて、引き取って育ててくれたのは、お母さんしかいないから。いまだに名前をちゃんと呼ばせてはくれないけど、名前を呼ばせてくれなくてもいいってぐらい感謝している。できれば”お母さん”って呼びたいけどね。こんなこと言ったら絶対に怒られちゃうけど。


明日から今まで以上に感謝の気持ちを込めてお店に立とう。







次の日


「店長おはよう。」


「おはよう。今日はとりあえず一人で接客してみなさい。私は助けないから。」


「鬼だ…でも頑張ります!」



頑張ると言ったものの、この店は意外とお客様が多くて一人じゃ全然対応が追いつかない。

今までは店長が接客して、その注文を私が作るってやっていたから全部ひとりでってなると今までと全然違う。

店長はどうやってこのお客様たちを対応していたの!?

私にはまだ難しいよ。



 「メリス、落ち着いて。周りをよく見ればどうしたらいいかわかるはずだよ。」



落ち着いてと言われても、お客様がいるのにどうやって落ち着けばいいの。

焦りすぎてるのか、いつもはしないようなミスばっかりしてる気がする。

一人でお店に立つってこんなにも不安で心細いんだ。

今は店長が近くで見ていてくれるけど、ひとり立ちしたらって考えたらすごく不安になってきた。



‐つづく‐





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】


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