第2話 外の人
「あの、失礼ですが、あなたはここの町の人ではないですよね?」
「ええ、まあ、俺は親方から地図を貰ってここにしか無いっていう花を買いに来たんですけど…」
「親方?ここにしかない花なんてないですし、ここには普通の花しか置いていませんよ?」
「まじか…。あ、俺はフラワーコーディネーターという仕事をしていて、その師匠みたいな人が親方。ここにしかない花ってのは、その親方が前にここで買ったっていう花で、親方が最後の作品に使いたいって言うから探しにこの町まで来たんです。って無いって言ってるのに今更説明しても変か。」
ふらわーこーでぃねーたー?
私たちの知らない仕事が外の町にはあるの?花屋とは違うのかな?
ここにしかない花なんて知らないし、そもそもこの町から出たことがないから外に咲いている花なんて見たことないしわかるわけない…
「ここにしか咲かない花なんてのはないよ。その親方が言ったのは間違いじゃないかい?」
「店長!」
「…!あなたのその体、石…か、何かですか?」
「宝石だよ。全部ね。」
「なるほど、宝石が体についているから動きが鈍いのか。」
「あんた、あんまり驚かないんだね。」
「まあ、人間色々あると思いますし。」
「そうかい、好きに見てきな。」
この人、外の人なのに店長の事みて驚かないなんて珍しい。たまに来る人たちは必ず驚くのに…化け物って。店長も気に入ったみたい。
「あの、親方が珍しい青い花を前に買ってきて、それを俺は探しているんです。」
「青い花…?」
「そう、ここにあるって聞いて来たんだけど、店の中にはなくて、どこにあるんだ?」
青い花って私がさっき咲かせたあの花のことかな?
わざわざその為だけにこの町に来たの?
外には青い花はないのかな?
「あの―」
「その花はないよ。残念だけど。」
店長?なんで花の事言わないんだろう。
まだ飾ってないから裏にあるのに。
「分かりました。まだしばらくこの町にいるつもりでいるので、また来ます。」
カラン
くいっと引っ張られて店長に裏へ連れていかれる。
「メリス、よく聞いて、あの人に花のことは話しちゃだめだよ。」
「なんで?花はあそこにあるのに。渡しても減るものじゃないじゃない。それに前に外の人に売ったじゃない。」
「それは…、とりあえず、メリスから咲いた花なんて外の人に知られたらどうなるか分からないんだよ?用心することに越したことはない。」
「でも!…分かった。」
いつになく店長の目が怖かった。
知られたらどうなるかって、どうなるっていうの?
私はこの体から咲く花を活用してくれるなら、捨てるより全然いいと思っているのに。
ここの町の人たちは見慣れているからそうそう買ってくれない。
店長との約束は破りたくないし、しばらくは様子見ようかな。
あの日に男の人が来てから二回ぐらいお店に来たけど毎回店長が追い返しちゃう。
あの人も毎回残念そうに帰っていくから、ちょっとかわいそう。
そういえば、最初来た時に親方さんの最後の作品に使いたいって言ってた気がする。
そろそろ一週間ここにいるけど大丈夫なのかな?
カラン
またあの人だ。
花はないって言うように店長との約束だしあるとは言えない…
「あの、今日は花ありますか?」
「いらっしゃいませ。ごめんなさい。」
「そうですか…そろそろ一週間経つので、帰ります。何回も来てご迷惑をおかけしました。」
「いえ、こちらこそ期待に応えられなくてごめんなさい。」
帰っちゃうんだ。そりゃそうだよね、目的のものがなかったら帰るよね。
今まで見たことないぐらいすごい悲しそうな顔。
花、どうするんだろう。
「あの、花はどうするんですか?」
「花はなかったって親方に言います。探したけどなかったって。」
「そうですか。引き留めてすみません。お気をつけて。」
「ありがとうございます。」
無かったって親方さんに言うって言ってたけど、本当にそれでいいのかな…。
最後の作品だって言ってたし、どうするんだろう。
やっぱりそのまま帰ってもらうのはダメだと思う。
追いかけよう。
-つづく-
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【あとがき】
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