七夕、会えないなら夢の中へ

石嶋ユウ

七夕、会えないなら夢の中へ

 姫ちゃんと星くんはとても仲睦まじい恋人でした。ある時、神様が姫ちゃんと星くんがあまりにも仲が良いから二人にやきもちを焼いて二人を離れ離れにしました。それでも、会いたがった二人は神様に直談判をして、毎年七月七日には天の川橋を二人の間に架けて、会えるようになりました。


 ここまでは、どこにでもある普通のお話です。ですが、この二人を神様は放ってはおけなかったのです。今年の七月五日のことでした。突如、神様は別々に暮らす二人を繋ぐ天の川橋を今年は架けないと言い出してしまいました。二人は怒りました。それはもうカンカンです。それでも、神様は橋は架けないと一点張りです。


 二人は途方にくれました。星くんは仕事に手がつかなくなり、姫ちゃんも泣きつぶれました。それでも二人は諦めきれませんでした。泣きつぶれた姫ちゃんは七月六日の朝、思いつきました。

「そうだ! 夢の中なら会えるわ!」

 姫ちゃんは早速、通販で夢の世界へと飛び込める枕を買いました。それはかなり高価だったのですが、姫ちゃんは星くんと会えるならば、お金を惜しみませんでした。それから、星くんにもこの計画を神様に知られないようにこっそりと伝えました。姫ちゃんの計画を知った星くんは仕事へのやる気を取り戻して、急いで姫ちゃんと同じ枕を買いました。


 ついに七月七日の夜がやってきました。神様の言う通り、毎年架かっていた天の川橋は、今年は架かりませんでした。神様は大満足でした。あの二人はとても悲しんでいるのだろうなと思って、神様は午後七時に宴を開きました。それから一時間で酔い潰れて眠ってしまいました。


 姫ちゃんと星くんは神様が眠ったのを確かめると、計画を実行に移しました。新品の枕を使って、二人は夢の中へと入って行きました。夢の中はのどかなお花畑で、上には綺麗な星空がありました。二人はお互いを探しました。そして、ついに見つけました。

「星くん!!」

「姫ちゃん!!」

 二人は夢の中とはいえ再開を果たせました。星くんと姫ちゃんは泣いて泣いて喜びました。


 二人はこの一年であった出来事や、お互いの気持ちを伝えあったりしました。しばらく遊んでから、二人はそれぞれの現の世界に帰ることにしました。

「じゃあね」

「うん、また!」


 これ以来、二人は神様に隠れて、夢の中でこっそり会っているとのことです。


 おしまい。


(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

七夕、会えないなら夢の中へ 石嶋ユウ @Yu_Ishizima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説