136話 別格と神能

 


 ソフィが軽く後ろに跳躍して躱す。





「おやおや、久しぶりだね。パンタシア」



「死ね! 【現幻混淆げんげんこんこう世界】!」



「無理なのは分かっているだろうに」



 パチンッと乾いた指鳴らしで何かが弾ける。フニフニさんが使った何かしらのスキルを消したようだ。




「チッ」




「まったく、師匠に向かって暴言に舌打ち、酷い弟子もいたもんだね」



 フニフニさんはこいつの弟子なのか。てことは、こいつかなり年増だな。若返りの薬とかがあるのだろうか。



 今のうちに逃げたいが、謎の拘束で身動きが取れない。たぶん喋りながらも何かしてるんだろう。



「ご主人様! ご無事ですか!」

「何事?」

「何か修羅場みたいでやんすね」


「あれ? オリジンさんはどこへ?」


「そのショタがクロって人なのー?」

「ミースさん、面識があるはずなので違うと思いますよ」



 騒がしいやつらが来たな。俺とやつの間に入ってくれたのは有難いが。



「はあ、全員ここから逃げるさね」



「ご主人様! 何してるんですか! 起きてくださいよ!」



 目開いてるやろが。何故か喋れないから返事ができない。



「【鬼拳】……何かに閉じ込められてるようですね」



 怖っ! 試しにスキルありで殴ってみるやつがいるか!




「煩わしいね。分を弁えて欲しいよ」



 ソフィの背後に数十、いやそれ以上の魔法陣が描かれる。



「試し打ちといこうか」



 全ての魔法陣から、火、水、岩、風、光、闇……バリエーションに富んだ攻撃が降り注ぐ。



「ヤンチャな弟子を放って、死ぬわけにはいかないさね」



 フニフニさんがリューゲの腕を掴み、迫る攻撃に向けさせる。



「使うさね。【範囲超拡張】」


「【絶魔】でやんす!」




 目前に迫っていた攻撃は、全てが無かったように消え去った。



「ああ、そういえばそんなスキルもあったね。だからどうしたって感じだけどね」




 ソフィが中指を親指で丸め、他の指は伸ばす。力を溜めた中指はユラユラとした白いオーラを纏い、デコピンの感覚で弾く。




「え」



 フニフニさんの上半身が、腕を残して吹き飛ぶ。



「は?」「嘘!?」「え? え?」



「……ッ!」「意味わかんない」「何が!?」



 ハク以外は呆け、ハクは何が起こったのか理解し、怒りを表す。


 俺もかなりくるものがある。フニフニさんはそれなりにお世話になったからな。ここに来てる時点でタラッタちゃんたちを無事に送ってこれたんだろうし。



「【天元突破】!!!!」


「【手槍】でやんす!」

「血の杭よ、〖ブラッドパイル〗ゥ!!」

「彼の者に裁きの光を〖ホーリーレイ〗!」

「神薙流奥義・千紫万紅せんしばんこう





 ハクに続いて同時に攻撃を仕掛けるが、




「効くわけないじゃないか。格が違うんだよ」



 ソフィが片手を前に出すと、全てが見えない壁に拒まれるように止まる。


 スキルを使ってない。神能持ちか。だとしたら、こいつのは、風か?



 いや、それだったら俺が押さえつけられているのはおかしい。

 いや、できるかもしれんが、もっと平らで硬質なものに押さえつけられている感じだ。



 ベタなのは、空間とかか?



 情報が少なすぎるし、決めつけるのはよくないが、そうだと仮定すると、かなり無理ゲーでは?


 こっちが勝てそうでも逃げられるわけだし。神能を封じる方法が無ければ勝てないだろう。





「そこで指を咥えることもできずに眺めてるといい」



 そう言って指を鳴らすと、全員の動きが止まった。ピクリとも動かないから、俺と同じ状況なんだろう。



「さて、生きてるかい?」



 俺に話しかけてきた。でも返事出来ないんだよなー。



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