124話 「憎悪の過去」

 


 先程と同じように壊れたテレビのように映っては終わり、を繰り返し、落ち着いてきた日常をを見せられる。


 だが、まだ中二だ。おそらくあれを見せようとしているのだろう。




「ただいま〜」


「おかえり……何かあった?」


「えっ? ううん、大丈夫〜」


「そっか。なら良かった」




 腹が立ってきた




 場面が切り替わる。姉さんが通ってる学校だ。様子のおかしい姉さんをこっそり見に来ているんだったな。



「掃除めんどー。あ、そうだ! 黒川やっといてくんね?」


「え、でも……」


「忙しいんだよー」

「そうだよ。あんたとちがって多忙なの!」



 ギャル風の奴らが姉さんに掃除を押し付けている。




 再び場面が切り替わる。




「ただいま〜」


「おかえ……制服は?」


「えっと、水こぼしただけだから〜」


「…………」



 場面が切り替わる。さっきのを確かめるために姉さんが制服を脱水しようとしてるところを覗いてる場面。


「やっぱり」


 制服はこぼして濡れてるレペルではなく、まるで上から水をかけられたような濡れ具合だ。





 場面が、切り替わる。



「どこいくの?」


「ちょっと文房具買いにね〜」


「この前買ったばっかりでは?」


「あはは、うっかりくしちゃってね〜」




 視界が揺らぐ。チカチカと色んな光景が次々と映る。だが、それは全て姉さんが我慢している光景だ。



 視界が落ち着く。姉さんの学校の校舎裏だ。また姉さんの現状を調べるため、証拠を抑えるため、カメラや録音機器を持って入り込んでいる。




「よく逃げなかったね?」

「逃げても意味無いけどねー」

「ふふっ、今日はゲストもいるのよ」


「もう、やめてくれませんか」


「はあ? 意味わかんなーい」

「うけるんですけどー」

「たけくん達、よろしくねー」


「おいおい、良いのかよ? こんな上玉」

「うほー、超デケーじゃん」



 男二人が出てくる。チャラついた不良みたいな奴らだ。制服は姉さんの学校のだ。



「な、何ですか?」


「何って決まってんじゃん。ここで俺らに犯されるんだよ!」

「そうそう」



 俺は拳を握りしめ、割り込む。



「なんだこいつ?」

「ヒーロー気取りかよ、笑えるわ」


「……近づくなよ、お前ら全員」


こう、くん?」



「おい、このガキ、のしていいよな?」

「うん、やっちゃえ! たけくん!」



 一発、俺の腹が殴られる。



「ハッ、これでもう十分だ」


「あ?」



 今のはわざと受けた。ちゃんと録画したまま。そして録画を止め、たけとかいうやつのすねを全力で蹴る。


「ッてぇな!」

「こいつ!」



 もう一人が殴りかかってくるが、相手の股間の進行方向に足を伸ばし、思いっきり蹴飛ばす。


「あ゛あ゛ぁっ!!」



 しゃがんでいる脛をおさえている方の肩を蹴り、横に倒す。



「たっぷりお返ししてやんよ」



 顔だけは避けて、腹を中心に踏みつけまくる。呻吟しんぎんしているが、お構い無しに踏みつける。


 別に喧嘩に強いとか、武術の心得があるとかではない。俺はただ、本気の殺意に突き動かされているだけだ。


「ひっ……」



 姉さんをいじめていた女子生徒がびびって逃げようとする。



「逃げんなよ。次、姉さんに同じことしたらこいつらみたいにするから、ちゃんと目に焼き付けろよ」



 恐怖で肩を震わせながら頷いているのを確認し、また踏みつけ続ける。






 場面が切り替わる。



 お互い犯罪レペルのことをして、決定的な証拠もあり、示談で話が終わるところだ。もちろん向こうの方が罪が大きかったが、過剰防衛としてかなり注意を受けているシーンだ。




 視界が、ブレる。


 ただひたすらに忌々しい記憶を見せられた。心に巣食うモヤモヤは、より肥大化している。




 今度こそ終わるようだ。視界が細やかに揺らぐ。




 これを見せたやつをボコボコにしなきゃ、気が済まない


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