79話 初対面と相性最悪


 到着だ。会議室とやらに全員集まっているらしいので向かっている。それにしても、俺の想像してた魔王城と全然違うな。


 もっとそこら中に罠とかが仕掛けられてるかと思ったのに、すごい綺麗で豪華でちゃんとしたお城だった。



「ここさね。私は魔王様を呼んでくるから待つさね」


「分かったよ。お邪魔するよ」

「失礼します」


 会議室と言うだけあって大きな机と沢山の椅子がある。そして、中には1人だけ。



「……ク、ノワール」



 ちゃんとそっちで呼んでくれた。察しの良い奴め。



「待たせちゃったね」


「……大丈夫……そのメイド」


「あぁ、彼女はマツ。ボクのメイドになったんだよ」


「初めてまして。マツです。ご主人様のご寵愛を一身に受ける、世界一のメイドです」


「……」



 かなりの誇張した自己紹介に、ネアも呆れ顔。たぶん。あんまり表情に変化が無いから勘だけど。



「貴方は?」


「……ネア」


「ご主人様とはどのようなご関係で?」


「……」



 どんな関係なんだろう。ビジネスパートナーとか?



「………………相棒」


「そうですか……。ですが、私とご主人様は身体と身体をぶつけ合った関係、貴方よりずっと深い関係ですので私の勝ちですね」


「……」


「おい……待って、その言い方には語弊があるよ。戦っただけだよ」



 危ない。あまりの急な口撃で素が出かけた。



「……私は……気にしてない」


「そうですかー? そう言った人ってすごい気にしてるんですよー?」



 煽りよる。



「……こいつ……いらない」



 いらない子扱いされたぞ、マツ。しかもいつもより嫌そうな顔が分かりやすい。相性最悪では?



「なら、どっちがご主人様の隣に立つに相応しいか、勝負です!」


 ノリが完全に少年漫画のそれなんよ。そんなのをネアが受けるわけが……


「……ボコボコにする」



 乗り気やんけ。









  「……絶対勝つ」


「貴方みたいなちびっこに負けるわけありません」



 無表情な魔法使いネアと、溢れんばかりの笑みを浮かべる戦闘狂マツがそれぞれ杖と拳を構え向かい合っている。



「はぁ、始めー」


 めんどくせぇ。あの後魔王さんが来たのに挨拶せずに訓練場を貸せと二人が要求して、ここに至る。魔王さんも可哀想に。



「……火の槍よ〖ファイヤランス〗」

「【本能覚醒】【鬼火】」



 ネアが魔法を放つと同時に、角が紅くなり、青白い炎が宙を舞う。鬼火に関してはどういう効果なんだろうな、俺が戦った時は何も害は無かったから分からんな。



「……【チェンジ】、風の刃よ〖ウィンドカッター〗」

「ほえ?」



 マツが避けた火の槍の一つとマツが入れ替わり、ネアとの距離が離される。



「ふぅ、もっと近くから攻めてこないと当たりませんよ?」


「……生まれ変われ……怪鳥」


「大きな鳥を出したところで勝てませんよ!」



 どこからともなく、ネアが従えてた鳥が現れた。少し小さい気もするが、普通の鳥よりかは大きい。鳥の召喚スキルか?



「【ラッシュ】!」

「……【チェンジ】」



 鳥とマツが入れ替わり、攻撃を避ける。いい加減キリが無くなってきたな。この辺で止めるのも審判の役目、決して暇だからでは無い。



「そこまでー、今回は引き分けー」


「ご主人様、まだやれます! というかここからです!」

「……今からボコボコにする」


「ダメでーす、というかそろそろここら辺でリスポーン地点の更新をしときたいからね」


「仕方ないですね。ご主人様がそう仰るなら」

「…………そう」



 二人とも、決着が着いてないことに不満なのが目に見えてわかる。でも、どっちの攻撃も相手には当たってないからしょうがないやろ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る