78話 談笑()とおニューの服


 負けた…………。コテンパンだ。あの二人はヤバい、大会とか出てもいいレベルで強かった。


 沙奈さんはシンプルに強くて、姉さんはとんでもない反射神経で沙奈さんと互角だった。まさかまさかの俺は0枚だ。


 特訓でもしようかな?



「準備してくる〜」


「ごゆっくり」


「は〜い」



 今からショッピングに行くらしい。女性は気分が変わりやすいと言うが、百人一首した後にショッピングに行こうとする人は中々いないと思う。


 そんで……気まずい!


 片付けも終わってテーブルで向かい合ったままお互い無言。何か共通の話題…………あ!



「いつも姉さんがお世話になってます」


「あー、ご丁寧にどうも」



 お互い椅子に座ったままお辞儀している。シュールな状況だ。



「姉さんはちょっと抜けてるところがあるから、大学でもきっとご迷惑をおかけして……」


「あの子とは高3から一緒に居るからよく知っるし、問題無いよ?」


「っ! そうだったんですか……」


「えぇ。だから君の事も聞いたよ、あの事もね。でもね、今のあの子はずっと強くなってるから」



 あぁ、思い出すだけで吐き気がする……



「でもっ!」


「あの子は君の姉だよ。君はもう少し甘えることも覚えた方がいい」



 姉。よく知ってる。誰よりもよく分かっている。でも、姉さんは俺が守らなきゃいけない。誰にも姉さんを傷つけることは許さない。だって姉さんは俺の……


「ジャジャ〜ン! お待たせ〜。あれ? 二人ともどうしたの〜?」


 姉さんが戻ってきたみたいだ。落ち着くためにも俺もゲームに戻ろう。



「とりあえず、俺の居ない時はお願いします」


「…………分かったよ」








 ログイン。ガタゴトと揺れている。まだ馬車のようだ。



「お帰りなさいませ、ご主人様」


「ずっと縫ってたのか?」



 こういうノンストレスな会話はいいな。落ち着いてくる。


 ……さっきは前の事を思い出してヤンデレみたいな感じになってたなー。束縛は絶対ダメだから気をつけないと。



「先程できたんです。こちら!」



 マツが見せてきたのは、純白な聖騎士っぽい服……だった物。その一張羅は灰色になっていた。俺の【混沌魔術】と同じような黒と白が半々で割られたような色。


 所々にあったはずの十字架の模様は消され、自分が神であると主張するように“GOD”と金糸で縫われている。



「色とか変わってるけど?」


「染めました!」


「GODってのは?」


「攻めちゃいました!」



 何に攻めちゃったんだよ。ノンストレスとか思ってたけど前言撤回、ストレスフルだわ。



「着てみてください」


「はいよー」


 他に着る物が無いから仕方ない。



「どうよ?」


「素晴らしいです! ご主人様にピッタリです。私の目に狂いは無かった……」



 急に自己陶酔タイムになったな。



「そろそろ着くさね」


 ずっと馬の手綱握っていたおばあさんが教えてくれた。ホントだ。あの黒くて禍々しいのが魔王城か……


「待って、何その馬?」


 普通にスルーしてた。馬と言うにはかなり異質な見た目をしている。



「こいつはキメラさね。私自身が幻術だから、代わりに賢いキメラが勝手に運ぶさね」



 そういえばそんなこと言ってたなー。つまりこいつ何もせずにキメラの上に乗ったフリをしてたわけだ。変人だな。


 ……馬車じゃなくてキメラ車だったのか。中々乗る機会無いんじゃないか? ラッキー。



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