72話裏 状況把握と晴れぬ疑念 (ネア視点)



「貴方たち程度で私に勝てるわけないじゃない」


「やってみないと分かんねーだろうが!」

「……そう」



 何か熱血スポーツ漫画みたいなノリだけどノってみる。



「そういえば、タラッタちゃんの父親は誰だ?」


「父親? 知らないわよ。ジェームス、ピエノフ、クタニメ、候補を挙げたらきりがないわ」



 逆ハーレムを築いているみたい。私はそういうのは苦手。



「まぁいいや。とりあえず性根を叩き直すためにもボコボコにしてやる」


「やれるものならやってみなさい」


「……また蚊帳の外」



 置いてけぼりで話が進んでいく。少人数だから話を振ってくれてもいいのに。




「何か思考がまとまらん。【深化】!」



 黒い泥がクロの体から溢れてきた。正直に言うと気持ち悪い。



「それが自分の力で御せれていれば、勝機もほんの少しはあったかもしれないわね」


「……前より濃い?」


 前見たのは王都だったはず。あの時より更に濃く、泥の量も多い気がする。



「醜いわ」



 ゴポッ


 クロが突然水の球体に包まれた。それと同時に足下に魔法陣が現れた…………






 目を開けると暗い石造りの豪華な場所。近くにいるのは……ロリだけみたい。



「ほう、貴様らが弱点か」


「フェッフエッ、魔王様、二人ほど連れて来れませんでした。もしかしたらその二人の可能性が……」


「いや、あの怯えっぷりを見ればこやつらでいいだろう。よくやった」


「ありがたき幸せです、フェッフェッフェッ」



 羊みたいな角のおじさんと、ローブの老婆と他にも鎧を着た連中と、檻に入った見知った二人組。


 二人組はイベントで会った、生意気なやつと変なやつ。



「……ここは?」


「儂の城、魔王城だ。少し頼み事があって召喚させてもらった」


 何となく察した。


「……続けて」


「実は儂の娘に魔王を代わってもらおうと試験的に一部の領地で練習さていたんだが、この二人が娘の領地を荒らして、殺しても生き返って困っているんだ」


「……なるほど」


「そして潜入させていた部下から儂に話が来て、生きたまま捕まえたわけだが、どうしようもなくて、弱点となるものをび寄せる魔術で喚ばせてもらった」



 人のことは言えないぐらい荒らしてるけど、完全に荒らした場所が悪かったと思う。他の所なら名誉に傷がつくのを恐れて表沙汰にはしないはずだから。



「……言い聞かせる」


「分かった。猿轡さるぐつわは外すから頼んだ」


「……時間がかかる……しばらくここにあの子と……住まわせてほしい」


「なるほど、部屋を用意させよう」


「ん」


 さて、説教タイム。




「……」


「えーと、お久しぶりです、ネアさん」

「お久しぶりでやんす!」


 睨んだけど、片方は頭おかしいと思う。



「……このまま反省してて」


「え? 流石に冗談ですよね?」

「酷いでやんす! お嬢様の足を見るくらいしかやることないんすよ!」


「あんたっ! 何見てんのよ!」

「視界に入ってるだけでやんす」



 確かクロはこの二人には偽名を使ってたはず。


「……ノワールを待つから」


「あ、はい」

「仕方ないでやんすねー」



 片方殺しちゃだめ?


 とりあえずクロにメッセージを送る。


 {クロ}

 {ネアー、無事かー}


 完全に被った。


 {ん}


 {どうなった?}


 {私とロリが一緒に魔王城に飛ばされて保護されてる}


 詳細は後でいい。言うと来なくなる可能性もある。



 {俺は今謎の森にいる}


 {ガンバ}



 そこでキョロキョロしてるロリがいる限り来るはず。……ロリコンだし。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る