67話 ごちゃごちゃと自称妹
夕陽が差し込んで、雨が降り出した。おかげで村を覆っていた火の海は次第に無くなり始めている。
「ん? アレ? 私、たしか……」
「君が一人で邪竜を倒したんだよ」
「私が?」
「そうだよ」
信じられないといった表情をしている。
「夢じゃなかったの? なら、パパは?」
「残念ながら」
「…………そっか」
「君が仇を討ったんだよ」
「そうね……」
空を仰いでいる。頬を伝うのが雨か、別の何かかは分からないが、共感はできる。ただ、俺と違うのは憎しみを発散出来て、行き場の無いもどかしい感情が無いということ。
「墓を建てようか」
「そうね」
「雨が降り出す前に灰はできるだけ集めたから」
「ありがとう」
近くにあった何の変哲もない木の下に適当に見繕った石を立てて、地面に灰を入れる。正式な埋葬法なんて知らないが、他の村人にはしてないので我慢して欲しい。
「今までありがとう、パパ」
「色々お世話になりました」
案内とか。説明とか。
「これから貴方はどうするの?」
「クロ」
「へ?」
「ボクの、いや、俺の名前だ」
「? ……っ!」
これを乗り越えたんだ。敬意を評して素の俺でいこう。……決して怒るとこわいからってビビったわけではない。うん、騙したままは良くないしな!
「フフッ、クロはどうするの?」
「俺は異界人と言って、今日の夜には消えるんだ」
「消える?」
「そうだ。また会えるかも分からない」
「……また会える気がするわ」
「何を根拠に?」
「女の勘よ」
それは……的中確率が高くて信頼の置ける占いだな。
「そうだな」
「結婚するんでしょ? 無理でも絶対会うのよ!」
俺っぽくない湿っぽい別れになりそうだな。あ、ずっと抱き抱えてるグラムさん返してもらわないと……
「あれ? クロの身体、薄くなってるよ?」
「えっ?」
マジやん。
「もうお別れみたいだ、だから」
「うん! 今度会ったら結婚式ね!」
「いや、あのグラm」
『イベントを終了します』『元のフィルードに転送します』『
視界が真っ白にー(棒)
「初めまs 」
「グラム返せ!」
「…………お母様の言葉を遮らないでください」
あれ? ここどこ? こいつら誰? 見渡す限り真っ白な空間に、全体的に白い子と、黒髪ロングの子がいる。
「初めまして、
「えぇ……」
情報量が多いんよ。
「とりあえず、順番に聞くけど、総合判断AIってのは?」
「私の役職です。簡単に言うと管理AIのトップです」
あのハクサイとか言うロリの上司か。
「なら次、お兄様とは?」
「お兄様はお兄様です」
「それボクのこと?」
「普通の話し方でいいです。家族と同じように扱って下さい」
AIなのに頭逝ってるから、修理した方がいいですよー。
「あまり時間も無いので手短かつ一方的にお話しますが、お兄様にはそのまま山脈を越え、レフト連合国も越え、更に北に一度踏み込んで欲しいです。連合国を越えた所は必ず一人で入って下さい」
ふむ?
「そして、魔族領にも行って魔王とも協力してください。決戦の際はプレイヤーの協力も仰ぐようにしてください、以上です」
助言か? なんかそのまま従うのは釈然としないが、反論させないという圧を感じる。
「よく分からないけど、できるだけのことはする」
「ありがとうございます。もっとプライベートなこともお話したかったのですが、時間のようです。お元気で」
「そっちも元気で」
自称妹なんてヤバいやつとは二度と話したくはないけどな。
視界が暗転する――
◇ ◇ ◇ ◇
残された二人の少女たち。
「よろしかったのですか?」
「いいんです。そういうのはお姉様から言うべきでしょう」
「今回のような特殊な条件は一回きりですが、本当にこんな早い段階で大丈夫でしょうか?」
「侵食を防ぐために選びましたけど、今後の為にもあの三人は揃えさせておくのも正解ですし、なにより…………」
「お母様?」
「いえ、なんでもありません」
「?」
「むしろ私の手間が省けるので助かる案件です」
「ならよかったです」
「続きは言いたいので言いますが、あまりお兄様を舐めないでください。お兄様ならきっと、私の想定の最短ルートを行ってくださるはずです」
「そうですか」
「そうです」
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