47話裏① 印象と力の差(サキュバスさん視点)
私は今、教会の屋根裏で勇者がやって来るのを待っている。魔王様から聖剣の破壊の話を私に持って来たのには驚いたけど、このまま行けば上手くいくはず。
最初にあの仮面の男と会った時は死んだかと思ったのを鮮明に覚えている。レベルでは私の方が上だろうけど、魔の匂いの濃さが異常だった。戦闘特化のテメリテや魔王様なら倒せるだろうけど、それでも間違いなく苦戦するわ。
そんな奇妙な人間と協力するのは致し方ないことだと思う。あの人間が何をしようとしているかは教えてくれなかったから分からないけど、気になるから早く終わらせたい気持ちが出てきている。
私の【振り撒く魅力】が効けば、こんなに悶々としなくて済んだのに。
「こちらが聖剣エクスカリバーです」
ヴイェルジュが上手く誘導したようね。
黒髪の勇者と思しき人間と、その後ろに3人がいるわね。全員女……魅了は効くだろうけど、男の方が得意だったし、残念ね。
「案内、ありがとうございます」
「いいえ、これも私の役目ですので」
勇者が聖剣に手をかけ、台座から引き抜く。
キーーーーン
刀身が眩しいほど輝きだす。今ね!
「【瞬速の束縛】」
「なっ!」
屋根裏を壊して聖剣に高速の鞭を巻き付ける。
速度重視で命中率が壊滅的だけど、そこは長年の鞭扱いで補い、順調に聖剣を奪う。
「魔族!?【飛斬】!」
「魔族だからっていきなり攻撃するなんて、一体どんな教育を受けたのかしら?」
鞭で弾きながら話しかける。聖剣が壊れない。武器破壊の鉄槌は貸し与えられたから全力で打ちつけているけど、
仕方ないので、念の為持ってきた拡張バックに入れる。
「なら、聖剣を返して」
「そうはいかないわ」
勇者は異界人がなるから何度も生き返るらしい。でも、力量を測るのは大事だと思うし、戦ってみよう。魅了が効けば万々歳だしね。
【振り撒く魅力】を全開にする。日常生活では支障が出るから抑えていたけど、人間に全開を使ったのは仮面の男の次で二回目。
「なっ……これは……」
「ッ」
「何ですの? これ……」
「ポッ」
勇者はあと一歩で、紫の剣士は耐えていて、金髪の修道服の人間は疑問を持ったけどもうすぐ堕ちる。緑の弓使いはあっさりかかった。
これなら簡単に勝てそうね。
「ああああ!!!【スラッシュ】!」
「【明鏡止水】」
「……か……穢れを……浄化し……え……〖きゅ……あ〗」
勇者は突っ込んで、残り2人は状態異常回復をしているみたい。勇者の斬撃は鞭で防いで、
「闇の槍よ、〖ダークランス〗」
「ぐっ」
心臓部を狙ったけど、空中で無理矢理身体を捻って脇腹に逸れた。
それでも重症に変わりわないからトドメを……
「【疾走】、【斬鉄】」
今度は剣士の攻撃。こちらも問題無く鞭で弾いて体勢を崩してからお返しをする。
「【五重詠唱】」
「「「「「闇の槍よ、〖ダークランス〗」」」」」
5本の紫の槍を同時に飛ばす。
「【流水】くっ!」
1本は逸らしたけど、他4本が体中に突き刺さる。致命傷のはずだ。
「【限界突破】【乾坤一擲】【グランドスラッシュ】!らああああ!!」
赤と黄のオーラを纏った勇者が性懲りも無く斬り掛かる。
「させないわよ!」
魅了した弓使いから援護が届き、勇者の足に矢が刺さりバランスを崩し、転ぶ。
「無様ね、勇者。どうしてこの程度の人間が魔王様の脅威になるのかは、聖剣のおかげということで納得がいったわ。もう満足だし、楽に殺してあげるわ」
「く……そ……」
相当痛いだろうに、睨む胆力だけはあるみたい。修道服の人間は剣士の治療をしている。もう治らないでしょうに。
「ここで折れないならまた会うこともあるでsy」
「ハハハハ!!!! 余所者は皆殺しだーー!!」
誰よ、老いぼれをここに入れたの。
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