第45話 襲撃?

「警備兵だ!」と同時に、空気銃のような軽い音が聞こえたと思うと、入り口付近で閃光が走った。

「目くらましだ!なだれ込んでくるぞ!」との叫びが聞こえ、辺りは騒然となった。殺傷能力のない武器を使ったことには僕も驚いた。相手は拿捕するつもりなのかも知れない。けれども、その意図が掴めなかった。器に対して容赦ない態度をとる相手とは思えなかったのだ。問答無用に攻撃してくる。僕はそう予測していた。それは九条を始め近藤も同意見だっただろう。近藤が武器の調達を薦めたのもそれが理由だったはずだ。そんなことを考えている時、


「応戦せよ!」と九条が叫んだ。

「待て!」と、僕はそれに待ったをかけた。立ち上がった兵士も驚いた顔をし動きを止め、一斉に僕へと視線が注がれた。その意思を代弁するかのように、

「何故だ!」と九条は厳しい口調で返した。


「戦闘の意思を感じられない」と答えると、

「現に攻撃されているではないか!」と九条は異論を唱えた。

「殺傷されてはいないだろ?」と返すと、九条は入り口付近に目を向けた。閃光が収まった場所には、倒れている仲間は一人も居ないことに気が付いたようだ。そもそも閃光弾を撃ち込んだら、同時に突入するのが戦術的には普通だが、それがない。攻めてくる気配がなかったのだ。


「どういうことだ?」と九条が不思議そうに呟くと、

「交戦を止めてくれて感謝します」との声が、入り口の先から聞こえた。その声は優しくさえずる小鳥のような声だった。すぐに五人の警備兵に囲まれた女性が入って来た。その姿を見た者は、黙って膝をつき頭を垂れた。僕と小林と康子だけはそれが誰かを理解できなかったが、膝まづくみんなの反応を見て、王族なのではないかと感じた。


「えっと、あなたは?」と問いかけると、その女性はにっこりと笑い、

「記憶がないのは本当のようね」とクスッと声を漏らした。九条は硬直したまま俯いている。かなり高貴な方なのだろう。

「すいません。その通りです」

「構いません。聞いておりましたから。私は第二王女の〇〇です」と答えたが、僕にはその名前を表現することが出来なかった。日本語どころか、世界中の言語でも言い表せないだろう。


「王女様ですか。お初にお目にかかります」と言って僕も片膝をついた。王族を崇拝することは聞き及んでいたからだ。もしも僕たちが王女をないがしろにすれば、反感を買う恐れさえある。小林も康子もそれに倣って腰を落とした。

「お初ではないですが、仕方ありませんね」と王女は微笑んだ。面識はあるようだが、全く記憶にはない。


「しかし、何用でこんなところへ?」と尋ねると、王女の顔つきが変わった。

「あなた方への協力の為です」その言答えに、周囲にはどよめきが起こった。「なぜ、王族であるあなたが助けてくれるのですか?」

「お話します。みなさんはお立ちになって作業を続けてください」と、膝まづくみんなに声を掛けた。


みんなには聞かせられない話なのだと理解し、僕は女王を小さな別室に案内した。同行者は僕ら三人と九条たちのチーム、小暮のチームと、僕の知り合いだと名乗った望月。それと数人の幹部クラスの兵だけだ。部屋に入ると女王は、みんなの顔を見回し納得したように頷くと、ゆっくりとだがはっきりとした口調で話し始めた。

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