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頭を抱える氷に、緑がぽんと肩を叩く。




「地道に、色仕掛けしてきな」


「俺がんばる……」




はぁ、とため息を吐く氷は、おもむろにガサゴソとカバンの中を漁ると、ひとつのポーチを出した。


それは昨日、緑が理事長に佐藤へ渡して欲しいと託したシンプルなクリーム色のポーチ。




「みどりん、昨日はホントに助かった。化粧ポーチありがと」


「いいのよ、家から病院へ出る時に引っ掴んできただけだもの」


「さすがみどりん、用意周到……!!」




緑はイケメンに加えて、冷静で判断力があって、女子力まで持ち合わせていて。


私もこれまで感謝するような事がたくさんあったことを思い出す。




の、だけど。




なんだろう……それはとっても素敵な緑の魅力で、私もそんな緑が好きで、素敵だと、思うのに。


素敵な友達だという気持ちに、嘘はない、のに。






二人を見ていたらなんだか、胸の奥の方がモヤモヤと霧がかったような気がした。















友達なんだから、それくらい普通なのに。


普通なんだって、頭ではわかっているのに。




無意識にギュッと、氷の腕を掴んでいた。




「和香……?」


「……あ、ごめん」




氷が他の人に向けている視線を、私に向けていて欲しいと。


そんな欲張りな私が、顔を出した。



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