第17話・ありがたくない噂
わたしは貴族の令嬢方から見れば明らかに異質だった。人目につかないように壁の花になりきっていたわたしは逆に男性陣の関心を惹いてしまったらしい。肉食系の貴族の姫ぎみたちから逃げ回っていた貴族の子息たちは、自分達から距離をとりけして自分を売り込もうとしないわたしにやすらぎを見出したのだ。彼らは心の底から疲れていた。だから大人しくしているわたしに目が向いたのだろう。
舞踏会ではけして目立たずお淑やかに舞踏会を拝見し人知れず去ってゆく。女性とは自分たちを狩る側と認識している男性たちにとっては信じられない行動であり、自分たちが害する行動も取らずにただその場に止まり男性から声をかけてもらうのを待っているようなそんな態度が奥ゆかしいと好感を抱かれていたらしい。
そのうちあれはどちらのご令嬢なのだ?と、関心を持つ若い貴族の男性達に噂されるようになり、素性がばれてからは常に注目されるようになってしまった。
そのせいで女性たちからは、『地味姫』のくせにと陰口を叩かれてしまうようになってしまったけれど仕方ない。わたしは彼女たちのように金髪碧眼の派手な容姿はしてないし鼻もそんなに高くないから。その彼女たちからの手厳しい視線や、若手貴族からの不躾な視線をやり過ごす為にヴェールを被りさらに顔を隠すように扇子を持つ事にしたら、今度は扇子の内側に隠されたヴェールを被った顔がそそられると噂を呼びブラバルト大公国の公女はミステリアスな要素を持った淑女と崇め称えられるようになってしまっていた。
そしてその噂がとうとうヘリオス国王にまで届いてしまったらしい。養父に連れられてパルシュ国の国境沿いのミランダ辺境伯の主催の舞踏会に招かれた時のこと。
わたしはその舞踏会にナイルも招かれているようだ。と、大公である養父から聞かされていたので彼に会う事を考えて心が弾んでいた。十年前に彼と別れてから一度も彼には会っていない。もしも今晩会えたなら、十年ぶりの再会になる。
今日はいつもよりめかし込みお気に入りのそら色のドレスを着て、結いあげた髪には月と星の形を模した髪飾りを挿していた。首にはブラバルト大公国特産のローズライトと呼ばれる薔薇の形をしたピンク色の宝石で作られた首飾り。顔にはいつも舞踏会に出る時にしてるように素顔を晒さないように紺のベールをつけた。
ヴェールで顔を隠したわたしに養父は目を細め、ナイルセルリアンに嫉妬しそうだよ。なんて言いながら馬車から降りたわたしの手を引いて会場へと足を踏み入れた。
そこでわたし達は思いがけない相手と顔を合わせる事となった。わたしたちを出迎えた主催者のミランダ辺境伯を押しのけるようにしてその後ろから、会いたくなかった男が姿を現わしたのだ。
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