8.俺の別世界転生 後編

ファンタはずっと真剣な顔で俺を見ている。


まるで、俺の反応を待っている様だ。


だが、俺は……


「え……………え?え?」


……と言う声しか出せなかった。


「俺は、前の世界---「ケルトの迷宮大国」。ダンジョンが多い国だった。俺はたまたま家に近い、そこら辺にある図書館にいた。俺が好きなのは冒険する物語。その本に「別世界転生」について書いてあったんだ。俺はその本を借りて、家に帰った。そして寝た。しかし朝、目が覚めたらこの世界にいたって訳さ。俺の予想だと寝ている時に誰かが俺を殺した、と思う。いつか、いつかあの世界に戻れたら、そいつを探して復讐すると決めた」


「え?じゃあ、ファンタのその体って……」


「俺の兄の体だ」


ま、ま、ま、


マジかぁぁああぁぁあぁぁぁあぁああああ!!!!!!!!


まさかの!まさかのファンタも転生を果たしていたあぁぁぁあぁああああ!!!

嘘だろ、嘘だろ!?

し、し、し、


しかも俺も転生をしていたぁぁあぁぁああぁああああああぁぁああああ!!!


俺を殺した奴!一体誰だあぁあああああ!?ブチ殺すぞ!!?!!

今度は俺が!復讐してやるからなぁぁああああ!!!


待ってろよ、クソ野郎!!!


「お、お、お、俺も許せないです!許しません!殺します、復讐します!」


「お、おう、お、おい、敬語はやめろっt」


「お、お、お、俺を、俺を殺しやがってぇええ!何回謝っても許しません!殺します、ぶっ殺します!」


俺はファンタの、ファンタさんの言葉を無視して叫んだ。


ゆ、ゆ、ゆ、許さないからなぁああ!待ってろ…待ってろ!その場を!離れるなよぉおおおおぉお!?俺が!お前を!ブチ殺す!!!


「お、おい、落ち着け…」


「待ってろよぉお!!」


俺は叫び終わったら、ゼーハー…と息を切らした。

ファンタが俺の肩をポンポン叩いた。


「言い忘れていたけどな、別世界転生した人はもう、前にいた街に戻れないんだ」


え?え?


え?


えええええええええぇぇぇええぇぇええええ!?


じゃ、じゃあ復讐は!?逆襲は!?ブチ殺すは!?ぶっ殺すは!?


「じゃ、じゃあそいつはずっと俺を殺した事を後悔せずにずっと笑っていられる事にいいいいいいいいいい!」


「落ち着けって」


「落ち着けませんよ!大体そんな事言われたら、夢も希望もなくなりますよ!」


「じゃあ、言わないでって事なのか?」


「うっ……」


俺は言葉を詰まらせた。


い、いやでも、でもね、でもさー。


「それは最後に言って欲しいですよ。だって、そんな事言われたら、他の森とかそういう所行く時に希望無くすじゃないですか。夢無くすじゃないですか。だから旅の終わりに全て言って欲しいですよ!でも…もうどうにもならないですけどね…」


「おう。でもな、希望はあるぜ」


「え?」


俺はバッとファンタさんを見た。


「もう前の街には戻れないけどな、他の街だったらどこでも転生できるんだ。ま、この街の条件を果たしてからだが」


「そ、その条件って……!」


「ああ。この旅の終わり、さ」


ファンタは、言う。


「この旅が終わったら、他の街へ転生出来るんだ。つまり」


ファンタはニッと笑ってこっちを見る。



「俺はお前の街に、お前は俺の街に行けるって事だ」



と、と言う事は……!


「俺が……ファンタさん……いや、ファンタの復讐を代わりにするって事?」


「ああ。そう言う事だ」


や、や、や、


「やったああああああ!」


俺は「嬉しい」で頭がいっぱいになって叫んだ。


「じゃあ、ファンタが俺を殺した奴に復讐してくれるって事かあぁああ!」


自分で出来ないのは悲しいが、ファンタがやってくれるなら嬉しい!


「ファンタ!俺が必ずお前の仇を取るからな!」


「おう、頼むぜ!俺もお前の仇を取る!」


俺とファンタは、拳をコツンとぶつけ合った。



「「必ず!!!」」



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