第24話

「ここまで来れば、見つかることはないでしょう」


アズチの周辺にある森の中に入ったところで時間停止を解除した。


「ヤマタノオロチを倒しに行く前に、作戦会議をしたいんだけどぶっちゃけ酒呑童子はどうやってヤマタノオロチを倒すつもりなの?」


「ヤマタノオロチって酒に弱いくせに酒が好きなんだよ」


酒飲ませて酔ったところを倒すつもりか。

日本神話でもそんな感じだもんな。ヤマタノオロチ酒に弱いわけじゃ無かったけど。


「酒で酔わせて倒すってことね」


「そうそう、僕の魔法も酒を使って状態異常にしたりするものだから僕の戦い方にもあってるし、それでなんだけど、小指の爪レベルのサイズでいいから精霊石くれないかな?」


そんなのいくらでも作れるから構わないけど何に使うつもりだろう?


「別に良いけど、そんなの使い道あるの?」


「お酒の確保に使いたいんだ」


そう言って酒呑童子は腰に下げてた瓢箪を手に取って説明を始める。


「この瓢箪は中に魔石を入れるとその魔石のレベルにあったお酒を生成してくれるんだ。昔ダンジョンの宝箱で手に入れたんだ」


へー凄い面白い瓢箪だな。

それにダンジョン産か〜、俺が入るダンジョンは自然を再現した階層ばっかだからまだ宝箱に遭遇したことないんだよね。

洞窟型とか遺跡型みたいなダンジョンには宝箱が多いって聞いたから、宝箱狙いで潜って見るのもありだな。



「つまり俺の作った精霊石をその瓢箪に入れて酒を作りたいって事だね?」


「そういうこと。前回も酒に酔わせて封印したから、流石のヤマタノオロチも警戒してるだろうから、出来るだけ品質の高い酒を用意したいからね」


お酒が弱点って分かってるなら余程の馬鹿じゃない限りヤマタノオロチは対策しているだろう。

自分で言うのもなんだけど、俺の作った精霊石を使えば相当レベルの高いお酒が作れるだろう。酒呑童子の要望通り小指の爪サイズの精霊石を作って渡した。


精霊石を受け取った酒呑童子は早速瓢箪の中に入れてシェイクしている。

最初は石が転がってるカラカラと言った音しかしてなかったのが、次第にジャバジャバと言った音に変わっていく。

ほんとに精霊石からお酒が作られてる。

疑ってた訳じゃ無いけど実際見るとすげぇってなるよね。


「よしよし、これがあれば僕だけでも倒せるかな」


準備も終わった見たいなので、酒呑童子の案内でヤマタノオロチのいる場所に向かう。

歩きじゃ時間がかかるから、フィアの重力魔法で飛んでヤマタノオロチの所までひとっ飛びしているところだ。


ヤマタノオロチのところに着くまで、ヤマタノオロチは毒を持っているのかとか 、やっぱり八本の首を同時に切り落とさないと倒せなかったりするだとか、気になった事を質問しまくってた。


ちなみに毒は噛まれると強力な物を注入されてしまうらしい。

首は八本同時に切り落とさなくても倒せるけど八本の首を全て切り落とされた状態で魔石を壊さないと倒せないらしい。


「あれがヤマタノオロチか」


山だと思っていたものはヤマタノオロチの胴体だった。


「もうちょっと小さいかと思ってたよ。これは一人で倒すサイズの魔物じゃないし、戦闘が長引いてヤマタノオロチの攻撃が街とかに当たったら大変だから俺もほどほどに攻撃することにするよ」


今は動いてないけど、少し動いただけで人里を下敷きにしてしまうかもしれないし。

とりあえず先制攻撃に直径30cmぐらいの氷塊の隕石をヤマタノオロチに向かって落下させる。


「精霊王様の攻撃だけでもこのまま勝てそうだけど、ちゃんと僕も攻撃しますか」


酒呑童子が瓢箪の栓を外すと霧状のお酒がヤマタノオロチの周りに漂い始める。


すると隕石が衝突しもがき苦しんでいたヤマタノオロチが次第に大人しくなっていく。

隕石の衝突で弱ってるのかな?とも思ったが、どうやら酒に酔って眠っているらしい

今も隕石が首に直撃してちぎれたのに全く起きる気配がない。


「精霊王様の作った精霊石を使ったお酒、想像以上の効果だよ」


そう言いながら酒呑童子は俺が貸した精霊刀を使って首を切り落としていた。

すげえな、刀で両断できるサイズじゃないと思うんだけど。


「この刀も凄い切れ味だ、ヤマタノオロチの鱗もスパスパ切れる」


そう言って残りの首も全て切り落としてしまった。


「魔石はこれだね」


酒呑童子はそのままの勢いで胴体から魔石を取り出しいて砕いた。


「想像以上に大きかったから、周りにも被害が出るんじゃって思ったけど、酒呑童子が酒で眠らせてくれたから特に被害をださずに倒せたね」


ニーズヘッグさんの方がよっぽどでかかったけど、あそこは特殊な結界の中だから戦闘の余波で人に被害がとか考えなくても良かったけど、今回はヤマタノオロチのブレスを避けたらブレスの範囲内に街がとかなってもおかしくなかったから、酒呑童子の酒を使った魔法で眠ってくれたのはほんとに助かった。


「精霊王様、これで僕を精霊界に連れて行ってくれるかな?」


「ああ、勿論。ちゃんと連れて行ってあげるよ。茨木童子もね」


「じゃあ、後はスズカとの約束を守るだけだね」


酒呑童子はそう言って額から生えた2本の角を手で掴んでなんの躊躇いもなく折った。



読んでいただきありがとうございます。




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