第23話
「私はそんな話は初めて聞きましたよ?」
私も将軍家の娘なのにと言って少し不満そうな視線を自分の母親に向ける。
「この事は15歳になったら教える決まりになってるから、まだ教えてなかったの。
そんなことより、この度はアホの酒呑のせいで奴隷になりかけてた娘を助けていただきありがとうございます。私はコノハの母親、織田スズカと申します。スズカとお呼びください」
そうなんだよね。酒呑童子も想定外だったらしいけど海賊に捕まって奴隷として売られる寸前だったからな。コノハさん。
…待てよ、海賊に対して武士が抵抗しないわけないよな。
ここで少なくない犠牲が出てるはずだよな?
これは酒呑童子のせいで出た被害って事だよね。
「やっぱり酒呑童子は殺しておくべきか…。それより先に挨拶ですね。コウ・アポストロスです。よろしくお願いします」
酒呑童子がまじで言ってるそれ?って視線を向けてくる。
「今までの酒呑ならまっさきに逃げてるだろうに、なぜ逃げないんですか?別に拘束されている訳じゃ無いんでしょう?」
「茨木を人質にされてるから逃げれないんだよ。それに精霊王様と敵対して精霊界に移住出来なくなると困るし」
「あら、そんな事になってたの?でも、貴方の意思では無かったとは言え、城を襲撃されたんだから、もう一生ダイワには足を踏み入れないので見逃してくださいって言ったって見逃すのは無理よ?」
だろうな〜。
「じゃあ、この角を折るって行ったら生きて別のところに許してくれる?」
酒呑童子が額に生えてる2本のツノに指をさしながら提案する。
「…それでいいなら見逃してあげましょう。でも、折った角は置いていってくださいよ?ダイワをでた後にくっつけられたら意味ないですから」
この時はなんで角折っただけで許されるんだろう?って思ってたけど、後から聞いた話、鬼の角は杖のような役割も持っていて角を折られた鬼は魔法が極端に使えなくなってしまうらしい。
酒呑童子は魔法が得意って感じの鬼っぽいし
代償としては確かに悪くなかったのかとその話を聞いて納得した。
「でも、角を折るのはちょっと後でいいかな?精霊王様が精霊界に連れていってくれる条件にヤマタノオロチを僕が倒すってのがあるから」
「倒せるのですか貴方に?」
「普通は無理だけど、ある程度手助けはしてくれるってことだし、極端な話僕がヤマタノオロチに負けて殺されたとしてもその後に精霊王様が瞬殺してくれるだろうから、ヤマタノオロチの討伐は絶対成功すると思うよ。なにせ時間を止めれちゃう人だよ?話を聞いて何それ?って思っちゃった」
「確かにそうですね。酒呑の勝ち負けに関わらずヤマタノオロチに未来が無いのは理解しました。酒呑がヤマタノオロチを倒して生き残った後に角を折ると言うのなら認めますよ」
「それじゃあ早速ヤマタノオロチを倒しに行こう。精霊王様、城にかけてる僕の魔法を全部消しちゃいたいから時間停止を解除してくれない?」
「確かにそうしても良いけど、今回は俺が元通りにしておくよ。その方が信用できるし」
逆行の権能を使い、酒呑童子が城に魔法を使う前まで巻き戻した。
「ざっとこんなもんかな」
「ホント、精霊王様って規格外なんだね〜。時間止めたり巻き戻したりって水の精霊王なら出来ることなの?」
「どうなんだろうね?水の精霊王に前任なんていなかったし」
わざわざ詳しく説明するつもりも今は無かったので適当に返事をしておいた。
「…ヤマタノオロチの所まで私も連れていってくれませんか?この国の代表としてヤマタノオロチが倒されるところをしっかり確認したいんです」
コノハさんからの突然のお願い、確かにダイワのお姫様がヤマタノオロチを倒すところを直に見て貰った方がその後が楽になるかな?
とは思うけど、魔物との戦闘だし、しっかり守りはするけど万が一が無いとは言えない。
「コノハが自分から行きたいと言ったんです。別にコノハを守ったりする必要は無いので、連れていってあげてくれませんか?」
どうしようか?と悩んでいると、スズカさんがとんでもないことを言う。
「良いんですか?失礼かもしれませんがコノハさんは自衛出来るほど戦えると思えないのですが」
「そうですね。なのに戦場について行きたいと言ってるんです。そのぐらいの覚悟はある筈です」
コノハさんの顔を見てみると、流石に誰も守ってくれないのはまずいです!って顔が言ってる。
「しっかり護衛もしますよ。ただしもしもの事が有るかもしれないって言うのは覚悟しておいてください」
「それは当然です。世界に絶対なんてものは無いですから」
これでヤマタノオロチのところにはコノハさんも着いてくることになった。
「リアはどうする?」
恐らく、コノハさん以上に戦闘力がないリアに1回精霊界に帰るか確認する。
「戦闘じゃ邪魔にしかならないので私は精霊界に一旦帰ります」
「それなら私も精霊界に帰ります」
リアは帰る事を選択して、なら私もとディアーネさんも精霊界に帰った。
「そしたら私は皆さんがヤマタノオロチを倒している間に旦那に話をして色々手筈を整えて起きます。時間停止は解除してくれるのですよね?」
「そうですね酒呑童子とアズチを出たら時間停止を解除したいと思います」
酒呑童子が街の中にいる間に時間停止を解除して、見つかったら大事だし。
一行はヤマタノオロチを倒すために行動を開始した。
読んでいただきありがとうございます。
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