第45話

「燃料の魔石が問題ないのはわかりましたが、最短ルートが敵多く配置されている可能性が高いです。やはり危険なのではと言う意見が多く・・・」


確かにそれもあるか〜。激しい戦闘が起こった場合、迂回路より時間がかかる可能性が高い。

急がば回れってことか?


「私は山越えでいいと思いますよ。さっきは船の性能を試す為に私たちが攻撃しなかっただけで、これからは違うでしょう?異世界の神相手ならともかく、それ以外の魔物に苦戦するつもりは有りません」


と言うアルさんの鶴の一声で山越えに決定した。

因みに今回の敵は全てアルさん1人で片ずけるつもりらしい。

余裕の表情で「準備運動ぐらいにはなるかしら?」って言ってた。

神獣アルビオンなんだから本人からしたらこの程度出来て当然なんだろうけど。

アルさんがどういった戦い方をするのか気になるし、今回も観戦モードで行きますか。


山脈に近づいてから一気に高度をあげるより

今から少しづつ高度を上げていった方が燃費が良いらしく、飛行船は上昇しながら前に進んでいる。


やることもないし船室に戻っても良かったんだけど、何となく甲板に残って景色を眺めている。


「侵入してから、魔物との遭遇はゼロ。

やっぱり山脈に集まってるって事なのかな」


飛べるがいないだけで、下に降りたらいっぱいクトゥルフ神話生物がいるのかもしれないけど、ここが南極大陸、狂気の山脈にての再現だとしたら古のものとかショゴス、クトゥルフの末裔辺りか。


「どいつもこいつも遭遇したら厄介だ。

厄介じゃないクトゥルフ神話生物なんていない気もするけど」


この世界で戦うなら、地球で戦うよりは絶望感は無いけど、耐性持ちも多いし厄介な攻撃方法持ってるやつも多いから気は抜けない。

歩く細菌兵器みたいなやつだっているんだから。


「1人で休憩している所失礼するよ。

2人っきりで話せる機会が無かったからね。少し付き合ってくれる?」


出てくるであろう神話生物のことを考えならボーッと景色を眺めているとアルさんがやってきた。


「俺で良ければいくらでも付き合いますが、誰かしらに聞かれると思いますよ?」


ここは甲板だから人の行き来は激しいし

必ず俺以外の人が1人はいるよ?


「問題ないよ、あの山脈に先行偵察しに行くことになったから一緒に来てくれないか?と思ってね。話もその間にすればいい。

私だけじゃ、魔物の確認は出来ても名称が分からない。その点、コウくんは詳しいだろう?」


確かに、クトゥルフ神話生物について俺以外で説明できるのはハジメくんぐらいだろう。


「わかりました。俺も先行偵察について行きます」


アルさんが飛行船から離れて人化を解き竜の姿に戻る。

やっぱり白竜ってカッコイイな。

何度見ても興奮する。

俺も精霊魔法で飛んでアルさんについて行こうとしたら、アルさんに止められた。


「私の背中に乗ればいいんだから無駄に魔力を消費する必要は無いでしょう」


「このぐらい消費のうちに入らないから大丈夫ですよ」


ただ飛んでるぐらいだったら魔力の消費速度より回復速度の方が何十倍も早い。


「いつもの状態ならそうでしょうね。異世界の神による、世界の書き換えを抑えているだけで魔力回復量の7割を常時消費してるのに、その状態で1万人以上の人に加護の付与。更に、この空間の中に入ってからエステルとマギが作ったアミュレットで防ぎきれてない効果もあなたが防いでいる。流石に魔力回復量を消費量の方が上回ってるでしょう?」


神獣は全てお見通しか。上手く騙せてると思ってたんだけど。

加護の付与は万全の状態なら、1番効果の低い加護なら一気に1万人以上に付与しようが

30分ぐらい休憩すれば大丈夫だけど。

常時、魔力回復量の7割を消費している状態で行えばかなりの負担がかかる。

それに、アミュレットでも防ぎきれてなかった、ステータスダウンが起きないように

多国籍軍全体に権能を使い続けていて、

消費量が回復量をちょっとだけ超過してるんだよね。

もうバレちゃってるし大人しくアルさんの背中に座った。


「上手く隠してるつもりだったんですけどね」


「まだ、私以外は気づいて無いわよ。ここに来てる人達は」


この中にいないのに俺の状態を確認できるのなんて神様連中ぐらいだろう。

あの人たちに隠せるなんて思ってないからそれは想定内。


「もしかして。だから、フェムトがアルさんに応援を頼んだんですか?」


「そういう事。あんなに必死なんフェムト初めて見たわ。もし断ってたら私消されてたんじゃない?」


そこまで?帰ってからフェムトにあうのが少し怖くなった。

だからと言って会わないって選択肢は無いけど。


「この事がバレると士気に関わるだろうし、黙っててくださいね」


一応、俺は今回の作戦の最大戦力だと認識されているはず。

そんな俺がもし、こんな状態って知られたら大変なことになるだろう。

バレて、ならなかったらちょっとヘコむ。


「それはそうでしょう。だけど、痩せ我慢にも限界があるでしょう。いつかバレるんじゃない?」


「フェムトから貰った魔力回復ポーションがあるから当分は平気。でも時間をかけてフェムトの魔力回復ポーションが無くなったらヤバい」


だから、時間が短いルートにするべきって言ってたんだよね。


「なら、少しでも早く進めるようにちゃっちゃと先行偵察を終わらせましょう」


アルさんの山脈に向かうスピードが上がった。


読んでいただきありがとうございます。






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