9話「プロポーズ」

「ナウマン公爵令嬢、僕との婚約について考えてくれた?」


皇太子殿下が留学してきてから一年が経ちます。私はこの一年皇太子殿下に毎日口説かれています。


皇太子殿下は初めてお会いした日、ブローチを拾った私に一目惚れしたらしいのです。


『留学する前からユーベル王国の王太子の婚約者は優秀だと聞いていました、ぜひ一度ゆっくり話をしてみたかった。こんな形でお話をする機会を得られて嬉しいです』


保健室で休んでいるとき、皇太子殿下がおっしゃった言葉です。


一年間同じクラスで学び、皇太子殿下がとても優秀で博識で努力家だと言うことが分かりました。


「私を公爵家ごとロイヒテン帝国で受け入れてくださるのなら、プロポーズをお受けします」


そう答えると皇太子殿下が破顔した。


皇太子殿下はこの一年で背が伸び、幼さが消え凛々しくなられました。


現在皇太子殿下は十四歳。大人と子供の中間で、可愛さの中に時おり色気が見え隠れして、絶妙のアンバランスさがたまらないと、学園の女生徒に大人気です。


でも笑った顔は無邪気な少年のまま。私にだけ見せてくれる無垢な笑顔に、胸がドキドキと音を立てています。


「いいよ、ナウマン公爵家の人間はみんな優秀だから大歓迎」


「一族の為に殿下を利用しようとしている打算的な女ですよ、よろしいのですか?」


「僕はそんなところも含めて君を愛しているから気にしないよ。むしろ皇太子妃になる女性は多少の打算が出来る方が好ましい」


皇太子殿下がそう言って優雅にほほ笑む。


「改めて申し込みます、ナウマン公爵令嬢いやリリー、僕と結婚して下さい。生涯あなただけを愛しぬくと誓います」


皇太子殿下が片膝を付き、私の右手を取る。


「よろしくお願いします、ラルフ様」


皇太子殿下に握られた右手に、左手を重ねた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る