2話「隣国の皇太子」
「この国の王族はそれだけの権力を持ってるってことかな? それともただの横暴? 王太子の権力を利用して弱いもの虐め?」
金色の髪に翡翠色の瞳の見目麗しい少年が立っていた。
少年の後ろには護衛が四人控えている、男が二人、女性が二人。
「なっ、誰だ貴様! 勝手に教室に入ってきて無礼だぞ!」
「申し遅れました、僕の名はラルフ・ロイヒテン、ロイヒテン帝国の皇太子です」
突然クラスに現れた少年が隣国の皇太子殿下と分かり教室内がざわつく。
ロイヒテン帝国は我が国より大きく、政治力、軍事力、魔法学、全てにおいて我が国を上回っている。
「隣国の皇太子が何のようだ」
隣国の皇太子殿下が自分より年下なのもあり、王太子は強気な態度を崩さない。
「明日からこの学園に通うので理事長に挨拶に参りました、ついでにクラスメイトの顔を見ておこうかと教室を訪れたのです」
皇太子殿下の年齢は十三歳、私達の四つ年下。皇太子殿下はこの学園に飛び級で留学してきた。
「それからそちらにいるナウマン公爵令嬢に、改めてお礼を伝えようと思いましてね」
「お礼だと?」
「ナウマン公爵令嬢とすれ違ったとき僕の身に付いていたブローチが落ちました。ナウマン公爵令嬢は僕の落としたブローチを拾って下さったのです。場所はダンスのレッスンをする部屋の前の廊下でしたね」
皇太子殿下の発言に教室内がざわつく。
「リリー、それは事実なのか?」
王太子は眉間にしわを寄せ、私を見据える。
「はい、殿下」
「ナウマン公爵令嬢の顔色が悪かったので、心配になり保健室まで付き添ったのです。もちろん護衛と一緒に」
「なに……!」
王太子がうろたえる。
「保健室には先生がいませんでした、なのでナウマン公爵令嬢の気分が良くなるまで付き添っていたのです。女性の護衛も一緒にいましたので、やましいことは何もありませんよ」
皇太子殿下が王太子を見てにっこりと微笑んだ。
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