第2話

 安定から不安定


 レンの本名はレンじゃなかった。花子と言うらしい…。

 レンは友達とよく遊びに行くようになった。朝まで帰らないこともしばしば…。

 レンは通帳を眺めながら溜め息をつくようになった。僕を見ても溜め息をつくようになった。

 朝、機嫌が悪い時が多くなった。朝御飯を作らなくなった。

 でも、僕は気にしない、レンと…いや、花子と一緒に居られるならそれだけでいいから…。


 ある日、花子が友達を連れてきていた。男が三人、女が二人…全員で僕を見た。軽く頭を下げて、僕は外に出た…花子が出てきた。

「ごめんね…これで寝カフェでも行って時間潰してきてもらえる?」

そう言って三千円くれた。

 僕は頷いて歩き出した。

 久しぶりにドトールでミルクレープでも買って帰ろうと思った。

 好きとか愛とか幸せとか…よく解らないけど、僕には解らないけど、花子がそれのどれかに該当していれば良いと思う。花子が僕を好きなら…花子が僕を愛してるなら…花子が幸せなら、僕はそれで良いと思っている。

 僕は寝カフェには行かないで、職場の先輩の家に行った。先輩は僕を見て「何かあったのか?」と聞いてきた。僕は花子の事を話した。「幸男君は優しすぎるよ…」と言って煙草を吸っている。

 しばらく先輩とcodをして僕は駅前に向かった。ドトールでミルクレープを二つ買って家に向かった。もう帰っていいかを電話したが花子は電話に出なかった。

 家には誰もいなかった。居間は食べかすや空き缶で散らかっていた。僕は自分の幼少から過ごしてきた部屋を知らない人に汚されてその掃除をしている…。

 掃除をしてから、ご飯を食べて…鯖の水煮にマヨネーズ醤油でご飯を食べた。これはかなり美味しいのである。

 風呂に入って、ベッドに潜り込み…寝た。


 こんな生活が週一から週二、週三へなっていった。僕は名前も知らない花子の友達の為にピザーラに電話したり、コンビニに買い物に行ったりした。花子と僕のベッドに知らないやつが寝ていたり、僕のパソコンを勝手に使っているやつがいたり…。花子は友達とネイルの話をしていたり…僕は台所の隅で母がよく座って煙草を吸っていた椅子に座って、それを眺めている。自分の鼓動の音を聴きながら…。


 母が出ていく時、僕を見ること無く去っていった。あの時の孤独感と同じ孤独感が今もある。

 花子じゃなくて…レンに会いたい…レンとウォーキングデッドを観ながらミルクレープを食べたい…。


 おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鼓動の音 門前払 勝無 @kaburemono

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る