わたしのちいさなオモチャたち

潰れたトマト

第1話 小人の楽園

「小百合ちゃ~ん!」


「小百合ちゃん最高だぁ~!」


「大好きだよ~小百合ちゃ~ん!」



 みんなが満面の笑みを浮かべながら、各々の身体で喜びを表現している。

 当然だろう。だって目の前にいるのはいわゆる『美少女』なのだから。


 肩まで伸びた麗しい黒髪。白くて玉のような肌。吸い込まれそうな琥珀色の瞳。小柄で華奢な護りたくなるような体格。

 そして、美しくもどこかあどけなさの残る表情。


 そんな美少女が、俺たちに微笑みを向けているのだ。喜ばない男はまずいないだろう。

 しかも、ここはそんな彼女が一日の大半を過ごす場所。そう、彼女の部屋だ。

 女子学生が好みそうな可愛らしいベッドや机、ぬいぐるみ等で満たされている。

 更に、だらしなく置かれたしわしわのパーカーや食べ残しのおやつが、彼女の生活感を醸し出している。興奮せずにはいられないだろう。



「………ふふっ♪」


「うぉぉ小百合ぃ~!」


「愛してるよ小百合ちゃ~ん!」



 彼女がみんなの声援に応えて、少し声を漏らす。周りのテンションは上がる一方だ。

 だが慣れない。その違和感を拭い去ろうとしても、未だに慣れる事ができないのだ。



 彼女の巨大さに。


望月小百合もちづきさゆり』という名の少女が、我々のおよそ1000倍の大きさの人間だという事実に。



 ズズゥン………!


「みんなちっちゃ~い♪かっわい~♪」



 そう、正確には彼女が大きいのではない。俺たち全員が、彼女の1/1000の大きさに満たない、小さな小人なのだ。


 ここは、彼女を奉る『小人の楽園』なのだ。

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